研究概要 |
TiSのこれまでの研究においては、ΔΩ=ΔΛの選択則に従う強いバンドのみが解析され、遷移強度の弱いΔΩ≠ΔΛとなるバンドの研究がなされていなかったため、スピン-軌道相互作用定数は実験的にきちんと決定されていなかった。電気光学素子を用いた周波数変調レーザー過渡吸収分光器とレーザーアブレーション装置を用いて昨年度に測定を始めた7400cm^<-1>付近に存在するTiS Ε ^3Π-Χ^3Δ(0,0)の分光においてΔΩ≠ΔΛの選択則に従うバンドを新たに測定することができた。 ジェットを用いた実験の利点としては低いエネルギー準位のみに分布させることができ、得られるスペクトルを解析しやすくできる。本研究では基底状態のΩ=1だけでなく2および3の準位にも回転量子数Jが40程度まで十分な分布を得るため、CS_2ガスの濃度を高くしたり背圧を下げることによって適切な温度に調節しΩ=0-1,1-2,2-3のメインバンドに加えて新しくΩ=0-2,2-2のサブバンドまで測定した。これにより今回、新たに実験的にスピン-軌道相互作用定数を決定することができた。Ω=0-2の観測される領域にはA-Χ(0,1)バンドに由来する遷移も数本観測されている。 Ω=0-1の測定結果の一部を図に示す。7471cm^<-1>付近のΩ=1のλ-type doublingの下の準位(a準位)のQ-branch head付近である。λ-type doublingの上の準位(b準位)のスペクトルも同じ領域に重なって見えている。解析によって得られた分子定数のうち、2次のスピン-軌道相互作用定数やラムダ型2重項定数を検討したところ、Χ^3Δは1電子配置モデルでよく表されるが、Ε^3Π状態はTiOの場合とは異なり1電子配置モデルではよく表せないことがわかった。
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