研究概要 |
1.本研究では,使用温度においてフェライト系耐熱鋼(630℃以下)とNi基超合金(800℃以上)の間にあるオーステナイト(fcc)系耐熱鋼に着目し,強化相として従来の炭化物ではなく金属間化合物を体積率にして50%以上含有する,新しい耐熱鋼を開発する上で必要不可欠な組織制御に関する基礎的知見を得ることを目的とした.本研究では,モデルケースとしてKurnakov型化合物Ni_3V(D0_<22>構造)の生成するNi-V系合金を用い,前年度までに得られた結果と併せて,優れた熱的安定性を有する組織を得るための組織制御法を(1)相変態,(2)化合物の形態の観点から検討し,以下の結論を得た. (1)fcc/D0_<22>2相組織の形成様式 高温fcc固溶体域から急冷したNi-V合金は,fcc/D0_<22>2相域において時効すると,次の3通りの様式により2相組織を形成する:(A)D0_<22>→D0_<22>+fcc(fcc相の析出),(B)D0_<22>→D0_<22>+fcc(D0_<22>相のスピノーダル分解),(C)Al→Al+D0_<22>(D0_<22>相の析出).このうち,(B)では,D0_<22>相が母相となるため,その体積率を高くすることができ,かつ2相の組成が連続的に変化するため界面は優れた整合性を示す.様式(B)による組織の形成領域は,D0_<22>相とfcc相間のT_0温度以下,かつD0_<22>相のmiscibility gapの内側である. (2)fcc/D0_<22>2相整合組織におけるD0_<22>相の形態 (B)の2相組織におけるD0_<22>相の形態は,D0_<22>相のa, c軸方向に沿う格子ミスフィット(δ_a,δ_c)が,-0.2%<δ_a<0,δ_c/δ_a=-1のとき角柱となり,最も熱的安定性が高くなる.これは,δ_aを0に近づけるとD0_<22>相はd軸方向に沿って優先的に成長し,不変線方向への成長が抑制されるためである.また,δ_c/δ_a~-1にすることにより晶へき面の時効に伴う回転を抑制できる.格子ミスフィットは合金元素の単独または複合添加により制御可能である. 2.また,平成15年10月から平成16年3月まで米国ミシガン大学において,耐熱合金における金属間化合物の新たな利用法を検討するため,Mg-Al-Ca系ダイキャスト合金の強化機構を調べた.その結果,鋳造時にα-Mg粒界に形成される非平衡共晶組織(α-Mg+Mg_2Ca)は時効により構成相がα-Mg+Al_2Caに変化するものの,共晶組織は安定であり,粒界すべりの抑制に効果的であることを明らかにした.また,共晶組織が高い安定性を示すのは,Mg_2Ca(C14)からAl_2Ca(C15)への相変態がin-situ nuclcationにより生じるためであることを見いだした.
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