本研究の目的は、ホヤゲノムをもちいて、遺伝子発現制御メカニズムの一端を明らかにすることにある。これまでの2年間は、日米の三つの研究機関(京都大学、国立遺伝学研究所、JGI)を中心として行われているカタユウレイボヤゲノムプロジェクトに参加してきたが、本年度においてドラフトゲノム配列の公開にいたった。その間、計算機を用いたデータ解析作業の一端を分担し、またアノテーション作業も行うことで、情報生物学的な技術面で貢献してきた。 本年度における具体的な実施内容は、以下のとおり。 1、カタユウレイボヤのESTデータを、ドラフトゲノム配列と比較し、ホヤゲノム中にコードされるユニークな遺伝子の数とその発現パターンについて、解析した。(論文投稿中) 2、ホヤゲノム中にコードされる遺伝子((1)によってユニークなグループに分けられたもの)のうち、他生物種で細胞周期に関連する遺伝子群と塩基配列に相同性のある複数の遺伝子について、分子系統学的な解析を行った。(第25回日本分子生物学会にて発表、論文投稿中) (1と2は、京都大学、分子・進化発生研、佐藤矩行教授との共同研究) ドラフトゲノムのデータと、1および2の結果から、ホヤゲノムが脊椎動物ゲノムと比較して、シンプルな特徴を持つ反面、ホヤで独立に生じた重複遺伝子を多くもつことが明らかとなってきた。来年度以降は、ホヤゲノム中のこれらパラログ遺伝子どうしの遺伝子発現の違いなどについて、情報生物学的な技術をもちいて解析する予定である。
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