研究課題
本研究は、地球規模あるいは地域的な気候・環境変化が、南半球の氷河の消長へおよぼす影響、およびその機構解明の糸口を得ることを目的として行われた。そのために、近年の氷河変動の規模が著しいパタゴニアの氷河を対象とし、その中で、気候環境との地形の異なる次の三つの代表的氷河を調査地域に選定した。ウプサラ氷河:南パタゴニア氷床から東側へ流出する、南米最大の氷河。モレノ氷河:上氷河と同じく南氷床から東側へ流出し、氷河の前進・後退が激しい氷河。チンダル氷河:南氷床から南方へ流出する大規模氷河(1985年にも予備的調査を実施)。調査研究の概要を以下に示す。(1)氷河の氷厚変動の直接測定:各氷河下流域側岸の露岩上に基準点を設け、光波測距儀を用いた測量により、氷河表面の高度を精密に測定した。二、三年後に再測量を行い、両者の結果から氷厚変化を求める。また。本測量を氷河滞在期間中に2回行い、氷河の流動速度(1〜2m/日)が得られた。(2)氷河周辺の地形調査:氷河末端、側岸のモレ-ン等の分布および氷河地形の調査を行い、氷河変動を明らかにする諸情報、デ-タを収集した。また、1984年撮影の空中写真と比較して氷河末端変動も調査した。多くの氷河で著しい後退傾向が認められた。(3)氷河の構造等の調査:特にチンダル氷河において、アイスレ-ダ-を用いた氷厚測定、融氷・気象観測、クレバス等の氷河構造の分布調査を行った。以上の結果は、平成3年度(調査総括)に解析をすすめ、同年度中にシンポジウム、論文等にて発表する予定である。また、本研究の主要な調査項目(1)のために、平成5年度の国際学術研究を申請する予定である。
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