研究課題
ソ連社会は急速に変化している。森林の管理の面では、国家林業委員会の一括管理から、1989年に一部の森林(サハリンを含めて極東の蓄積の多い森林は約1/2は、林産工業省(レスプロムホ-ズ)に管理権が移譲された。さらに、森林資源の利用権は、地方或は州政府レベルに移管をという地方の要望が強くだされていた。この大きな変化の中で、森林は換金の容易な単なる木材資源として略奪的に伐採されつつある。伐採対象の森林には、森林造成の可能な地域もあるが、低湿地や強風域など、今の技術では森林再生の困難な土地もあり、遺伝子を含めた森林資源の消滅だけでなく、北方圏の新たな環境問題となることも危惧され、日本の経済的・技術的面での主導的役割が期持される。一方、サハリン州では、まだ原始的自然が多く残っていて、林木の遺伝子資源の収集や河川・沼択地を含めた森林生態系の調査には良好なフイルドが残っている。北海道や他の極東地域等との比較研究をすすめることは、現地の研究者や関係者の積極的協力を得ながら可能である。しかし、ソ連の政治的・経済的混乱が続く中で、森林の破壊は加速的に進行していて、早急に研究条件をつくり着手することが必要である。この研究成果として、このことを国内の関係者に伝えることならびにソ連の関係者と現状の認識評価を一致させ、共同して資源の保全に当ることが第一と考えた。実績としては、北限のアカエゾマツ林、南限のグイマツ林等の環境を含めた記載及びこれらの種子を収集した。また、良好なエゾマツ林やトドマツ・エゾマツ林、日本時代に植栽された人工林などについても調査した。広大な森林火災跡地や伐採跡の未更新地域があり、ここでの気象・土壌等の環境変化と森林再生技術の共同研究が課題となろう。
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