研究課題
オ-ストラリアにおけるこれまでの調査研究により、クイ-ンズランド州熱帯地域の牛に感染が見られる単包虫は、野生動物の間に生活環を持つ単包虫の種内変異系である「野生型」であることが分かった。また、同様の現象は西オ-ストラリア州の野生動物の間でも見られた。そこで、本年度は西オ-ストラリア州、ニユ-サウスウエルズ州の南部と北部およびクイ-ンズランド州の南部と北部において、牛、めん羊および豚の単包虫の核酸、蛋白および酵素の電気泳動パタ-ンを比較したところ、クイ-ンズランド州北部熱帯以外の地域ではほとんどオ-ストラリア本土系牧場型(家畜型)であることが分かった。一方、キャンベラ南々東約45kmにある森林地帯における野生動物の調査では、野犬と狐の単包条虫(成虫)の感染率はそれぞれ86%と42%で、野犬の単包条虫の種内変異系は家畜型、野生型および両者の混合型がそれぞれ1/3を占め、狐からの虫体はすべて野生型であった。また、カンガル-類(オオカンガル-、アカクビワラビ-、オグロワラビ-)および野生豚の感染率はそれぞれ43%と31%であった。クイ-ンズランド州北部における野生豚の感染率は32%で今回は種内変異の同定はできなかった。クイ-ンズランド州北部での感染例を含む、20例の単包虫症患者の血清を各地から集め、めん羊由来の家畜型単包虫抗原を用い、ELISA法などの免疫血清学的検査をしたところ、すべて陽性反応を示した。しかし、野生型単包虫汚染地域であるクイ-ンズランド州北部住民の血清について、同様の免疫血清学的検査を実施したところ、すべて陰性であった。従って、平成3年度では、さらに調査地域を広げて例数を増やし、野生型単包虫抗原によるELISA法およびウエスタンプロッティング法などによる免疫血清学的検査を実施し、あわせて免疫診断法を改善し、確立する予定である。
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