研究分担者 |
CESAR BARBOS 環境庁(INDERENA)自然保護局, 専任研究員
CARLOS MEJIA ロス, アンデス大学・理学部, 教授
湯本 貴和 神戸大学, 理学部, 講師 (70192804)
竹原 明秀 岩手大学, 人文社会科学部, 助教授 (40216932)
原 正利 千葉県立中央博物館, 植物科長 (20250144)
平吹 喜彦 宮城教育大学, 教育学部, 助教授 (50143045)
木村 光伸 名古屋学院大学, 経済学部, 助教授 (50167376)
西邨 顕達 同志社大学, 工学部, 教授 (00027492)
大場 達之 千葉県立中央博物館, 副館長 (50124508)
BARBOSA Cesar INDERENA (Colombia)
MEJIA Carlos Los Andes University (Colombia)
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研究概要 |
私たちは南米コロンビア国・マカレナ地域において,そこの熱帯雨林に同所的に生息するオマキザル科7種の社会構造と,住環境である熱帯雨林の動態について,平成2年度から4年度まで,同国ロス・アンデス大学との共同研究としてインテンシヴな調査を行った。以下に3年間の研究成果の概要を述べる。 1.新世界ザルの通時的社会構造に関して 私たちはマカレナ地域の西部に設営した調査地で,そこに同所的に生息する大型4種のサル,ウーリーモンキー,クモザル,ホエザル,オマキザルの複数の群れをハビチュエーションないし餌づけし,全頭を個体識別し,3年間継続して群内・群間の社会変動の調査を行った。以下が主な成果である。1).ウーリーモンキーとクモザルで,旧大陸のサル類では唯一アフリカの大型類人猿で見い出された特異な父系の社会構造を持つことが明らかになった。2).同時に,父系の社会でメスの移出入のメカニズムが解明された。3).ウーリーモンキーで,オトナ・オスの母乳飲み行動というサル類では初めての行動が明らかにされ,その行動特性および性行動との関連が群しく分析された。4).ホエザルは群れに複数頭のオスを擁しながら基本的には単雄群の社会構造を持つことが解明された。5).ホエザル単雄群の,オスの移出入のメカニズムが明らかになった。6).ホエザルのこのような社会で,d-maleの交代時に必ず仔殺しが起ることが明らかにされた。7).仔殺し要因の旧世界ザルとの比較研究がなされた。8).オマキザルはニホンザルと同様の複雄複雌群であり,母系の社会を持つことが明らかになった。9).オスの群れ移出入のメカニズムが解明された。10).群れの分裂のメカニズムとその要因が調査された。11).同じ複雄複雌の母系の社会でありながら,オマキザルとニホンザルで社会構造のどの部分が異なるかが,新しい食物の伝播の仕方の異いを通して解明された。 一方で,上記4種と同所的に生息する中型3種のサルについても同様の調査を行った。以下が主な成果である。12).ティティとヨザルが共にペア型の社会構造を持つことが確められた。13).同じ社会構造を持つティティとヨザルで,生息環境のすみわけの実態が詳しく調査された。14).ティティとヨザルの,新世界ザルの系統進化上の位置が,上記すみわけの実態調査の結果を通して分析された。15).リスザルがサル類の中で特異な社会構造-複雄複雌群でありながらオスとメスが日常的にサブ・グループを作って生活する-を持つことが明らかになった。 2.熱帯雨林の動態と構造に関して 同じマカレナ調査地で熱帯雨林を生態学的に解析した。特に雨季と乾季2度づつの調査を3年間継続できたことで,以下の成果を得た。1).新たに1,300点を超える植物標本を作成した。2).コロンビア国内の主要研究機関とアメリカ・ミズーリ植物園において標本を比較・照合し,調査地の主要な植物323種を同定した。3).うち260種を写真撮影し図鑑を試作した。4).調査地の植物相が地理的分布様式の異なる4つの植物群から構成されていることを明らかにした。5).航空写真と現地踏査から植生と地形の基本構造を明らかにした。6).植物社会学的観点から植生を調べ,群落型の抽出・序列化を試みた。7).濫乱原上の生態系遷移を群落の組成と構造,微地形,土壌環境の面から群細に解析した。8).キク科の先駆低木Tessaria integrifoliaとBacchars salicifoliaの個体群動態を,個体のサイズ・分散構造,地上部諸器官でのアロケーション,雌雄性等の視点から解析した。9).クワ科の先駆高木Cecropia sp.の幼樹で,伸長成長量を継続測定した。10).1988年に設置した4ヶ所の永久方形区で再度毎木調査を行い,生死,幹肥大成長量,開花・結実の有無,被陰関系の変化などを把握した。11).新たに50X50mの永久方形区を2ヶ所設置し,植物群落の組成と構造を調べた。12).サルの採食行動と植物の開葉・開花・結実などのフェノロジーを同時記録した。13).熱帯雨林の植物とサル類との共進化のありようを解明するために,種子の散布様式と被食が発芽率におよぼす影響を調ベた。14).同様の調査を果実食の大型鳥類で行い,サルの場合と比較を行った。
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