研究分担者 |
SHAMSUL A.B. マレーシア国民大学, 人類学・社会学部, 助教授
SOMBOON Suks チュラロンコーン大学, 政治学部, 教授
寺田 勇文 上智大学, 外国語学部, 助教授 (20150550)
野口 鐵郎 筑波大学, 歴史・人類学系, 教授 (20017726)
中島 成久 法政大学, 第一教養部, 助教授 (80117184)
吉田 禎吾 桜美林大学, 国際学部, 教授 (60037025)
小野澤 正喜 筑波大学, 歴史・人類学系, 助教授 (90037044)
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研究概要 |
本研究は,東南アジアの5ケ国(タイ,インドネシア,フィリピン,マレ-シア,シンガポ-ル)における国民国家形成の過程で,各国民を構成する民族集団の位相を促え,その比較研究を通して,当該国において,民族集団間の同化,融和,多文化主義のいずれが強調されているかを,エスニシティの実態を把握することによって究明しようとするものである。タイ国の場合は,平地政体を支配しているシャム族を優位民族集団とし,弱少の少数民族を「同化」させようとする「中央一周辺型」的志向が極めて強い。しかし,プ-タイ族,ラオ族,プアン族など,タイ族内の下位民族集団の位置づけは今後の研究にまつところが多い。インドネシアはオランダの植民地をそのまま“世襲"した国民国家であり,マレ-文化の範疇の中に数百の民族集団が分布する。バリ島の観光化が伝統的民族文化の積極的保存の方向へ動いていることは興味深い。フィリピンについては平地のキリスト教系の8つのカテゴリ-が,単なる言語による相違か,相互に独立した民族集団とよびうる存在であるのか,社会組織をも含めたなお一層の考察を要する。これにはミンダチオ西部からスル-諸島へかけて分布するイスラム系身族集団の分析が重要な示唆を与えるものと考える。マレ-シアではプミプトラ政策のため華人集団は政治的に抑圧されているが,なお強力な経済力を維持しているため,マレ-系との関係は「均衡多元型」となっている。今年からサラワク地区の研究にも着手した。シンガポ-ルは華人人口が80%を占めており,英語を公用語としているが,近年華人文化の伝統が再考されてきている。一種の多文化主義であるが,新らしく「シンガポ-ル型」を考える必要もあろう。東南アジアのエスニシティ研究では(1)民族文化のカテゴリ-,(2)民族集団,(3)国民国家,(4)西欧植民地主義の四要素の相互関連が考察されねばならない。
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