研究概要 |
現地で採集した標本の到着が遅れ,平成3年3月始めにこれらを入手し,ただちに室内作業にとりかかった。その結果はこれから先次第に明らかになるであろう。現段階では野外調査によって明らかになったいくつかの点に絞って実績をのべる。 ペチャブン〜ロムサック地域: この地域はハイウェイの建設にともなって地層が好露出し,ペルム紀の遠洋性の地層とされる泥質岩・珪質岩にペルム紀のフズリナ石炭岩が介在している。われわれの野外での観察では石炭岩は異地性岩体である可能性が強く,これらの地層を簡単にペルム紀とするには疑問がもたれた。この解決は室内作業の進展によって珪質岩や泥質岩から放散虫やコノドント化石の抽出に成功すれば解決するとみられ,新しい時代論によってこの地域の構造発達史の見直しが可能となる。 ロエイ〜バクチョム地域: この地域には時代未詳のチャ-ト層が知られているが,今回各地で放散虫ならびにコノドント化石発見した。またこれに随伴する地層から時代決定に有効なconularia化石を発見したのでこの地域の非石炭岩相の地層の層序,時代論,構造の決定に貴重な資料を提供できるとみられる。 チェンマイ北部〜ロンカイ地域: この地域の珪質岩からも保存状態はあまり期待できないが放散虫化石を見いだした。これらの地層は古生代中期であることが判明しているので,世界的に研究の遅れている古生代中期放散虫化石群の解明に貴重な資料と思われる。 パトルング〜ソンクラ地域: この地域では前者から三畳系,後者から石炭系の保存状態のよい放散虫・コノドントを抽出できる可能性が高く,新しい時代論が得られるものとみられる。 室内作業が著についたばかりであるが,野外調査だけからもこのように新事実が得られているので,初期の目的を達しつつある。
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