研究課題/領域番号 |
02041014
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
猪郷 久義 筑波大学, 地球科学系, 教授 (20015572)
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研究分担者 |
KHO Hang Pen マレーシア地質調査所, 地質技師
NAKORNSRI Ni タイ鉱山局地質調査所, 地質部, 部長
安達 修子 筑波大学, 地球科学系, 助手 (80182997)
指田 勝男 筑波大学, 地球科学系, 助教授 (60134201)
小池 敏夫 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (80037283)
NIKORN Nakorusri Geological Survey of Thailand
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研究期間 (年度) |
1990 – 1991
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キーワード | 東南アジア / ゴンドワナ大陸 / テ-チス海 / 放散虫 / テレ-ン解析 / チャ-ト |
研究概要 |
マレ-シア国の資料は現在処理・検討中のため平成2年度のタイ国調査で得られた研究成果の概略について報告する。平成2年度の調査はタイ国北部、北東部及び南部地域で行われた。以下、これら三つの地域での微古生物学的研究成果について略述する。 1)タイ国北部の放散虫:タイ国北部のチェンマイとファンを結ぶ国道沿いには“Fang Chert"とよばれるチャ-トや珪質穏岩からなる堆積岩類が分布する。これまでの研究では“Fang Chert"の年代は前期デボン紀と考えられてきた。筆者らはチャ-ト・珪質頁岩から、後期デボン期〜前期石炭紀の放散虫及び前期〜中期ベルム紀の放散虫群集(Pseudoalbaillella nodosa Zone〜Follicucullus monacanthus Zone)を得ることができた。このうち、後期デボン紀〜前期石炭紀放散虫はオ-ストラリア東部から報告されている群集にきわめてよく類似している。また,ペルム紀放散虫は日本、フィリピン及び中国南部から報告されているテ-チス系の放散虫群集に比較される。 2)タイ国北東部の放散虫:タイ国北東部、ロエイ北方のメコン川流域にはデボン紀石灰岩の分布が知られていた。しかしこれまでは砕屑岩類・珪質岩類の年代はほとんど明らかにされていなかった。筆者らはパック・チョム村周辺に露出する緑色のチャ-ト・珪質頁岩から後期デボン紀〜前期石炭紀の放散虫群集を得ることができた。前期石炭紀の放散虫はこれまでにオ-ストラリア東部から報告されている同じ時代の群集にきわめて類似している。パック・チョムとロエイを結ぶ国道沿いには現在採掘されていない多くのマンガン鉱山がある。筆者らはプ-・ラエムとプ-・サン周辺のマンガン鉱山跡に露出する黒色チャ-トと珪質頁岩から後期デボン紀の放散虫群集を得ることができた。これらの放散虫群集の種構成は西オ-ストラリアのGogo Formationやオ-ストラリア東部のNew England Fold Beltから報告されているものにきわめてよく類似している。 3)タイ国南部の放散虫:タイ国南部パットルング周辺に露出する石灰岩はこれまでペルム系のRat Buri石灰岩と同一のものと考えられてきた。研究代表者の猪郷はかつてカオ・チアックの石灰岩の石切り場から中期三畳紀前期のコノドント化石を報告し(Igo et al.,1988)、Rat Buri石灰岩の一部には三畳系も含まれることが明らかになった。筆者らは再びこの石灰岩を採取し、されに詳しい古生物学的検討を行った。その結果、きわめて保存良好な放散虫とコノドント化石を得ることができた。この放散虫はその多くが、これまで中生代からはまったく報告されていない古生代に特有なentactinidsのグル-プであることが明らかになった。現在までに、Entactinia,Entactinosphaera及びPolyentactinia属が識別されている。そのほか、Actinomid属や針状骨格を持つpalaeoscenidiidsや三足骨格を持つNassellariaが得られた。記載・検討中であるがこれらの放散虫の三畳紀からの産出はEntactinidae科の進化・系統を考察する上で、きわめて貴重な資料を提供するものと思われる。 以上述べたように、タイ国北部、北東部地域の後期デボン紀〜前期石炭紀の放散虫はオ-ストラリア東部及び西部から報告されている同時代の群集にきわめてよく類似している。本研究によって得られた新しい資料と既存の古生物学的資料から東南アジアの古生代の古地理について以下のことが明らかになった。すなわち、タイ国北部地域を含む“Shibumasu Terrane"及びタイ国北東部の“Indochina Terrane"は後期古生代の前期ペルム紀までは現在のオ-ストラリア、南極、アフリカ、南米及びインド大陸がかつて形づくっていたゴンドワナ大陸の一部であり、中期ペルム紀以降、“SHibumas Terrane",“Indochina Terrane"ともに北方に移動しテ-チス海の要素を示すようになる。また、両“Terrane"は後期三畳紀〜前期ジュラ紀に衝突し、ユ-ラシア大陸の一部になった。
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