研究課題
国際学術研究
平成2年度ー平成3年度の本国際学術調査研究で、ソ連・サハリン島ユジノサハリンスク市とインドネシア・スマトラ島パラパト市に従来の地震計に比べて極めて優れた性能(広帯域、ハイダイナミックレンジ)を持つ地震計を設置することを計画した。(備考:本研究計画の途中で国名は「ソ連」から「ロシア」に変更したが、この報告書で「ソ連」と呼ぶ。)若干の変更はあったが、計画は順調に進んでいる。平成2年度にインドネシアとソ連の観測点サイト調査を行い、地震計の設置点を決定した。平成3年10月にインドネシアにおける超高性能地震計の設置を完了し、ソ連の観測点は平成4年3月に設置する予定である。なお、ソ連とインドネシアに設置する地震計はPOSEIDON(アジア・太平洋超高性能地震観測網)計画の第一段階として計画されたものであり、preーPOSEIDON観測網の一部となり、これから収録されるデ-タを東京大学地震研究所のpreーPOSEIDONデ-タセンタへ送る。全てのデ-タは公開される予定である。本研究の背景は次の通りである。全地球的に見ても極めて活動的な西太平洋地域に広帯域地震観測網を展開するPOSEIDON計画が1987年に日本国内の地球物理学関係者により提案され、国際的にもこの計画に対して強い期待が寄せられた。この計画は1988年にPOSEIDON国際会議を経て西太平洋地域の各国との共同観測の検討へと進展し,1989年度以降複数の科学研究費補助金等により(本研究も含む)ソ連・インドネシア・韓国・フィリピンの各国との共同観測の準備が進められてきた。1989年度ー1990年度科学研究費補助金一般B(課題名:国際協力による広帯震地震観測点の配置とデ-タ・ライブラリ運営、代表者:東京大学地震研究所教授、阿部勝征)と本国際学術調査研究によりソ連ユジノサハリンスク(YSS)及びインドネシア・パラパトの広帯域地震観測点を設置した。以下にインドネシア・ソ連の観測点の設置経過について報告する。インドネシア:平成2年度内、インドネシアの共同調査研究機関であるインドネシア気象庁(BMG)と交渉し、スマトラ島パラパトに観測点を設置することに決定した。今年度(平成3年10月17日ー25日)に置設チ-ム(ゲラ-、末次、グナワン)がパラパトを訪問し、地震計・記録システムを設置した。代表者と分担者外、東京大学地震研究所の鷹野澄講師と高橋正義助手が観測システムのソフトとハ-ドの開発に大学な役割を果たした。設置した観測システムの主要部品はSTSー2型地震計と記録装置用NCEーFC9801パソコンである。詳細は地震学会ニュ-スレタ-に記載される。設置された地震計は順調に稼働中であり、毎月予定通りBMGからデ-タテ-プを送付されている。今後の課題を以下に挙げる。(1)温度変化が地震記録にノイズを与えている。この影響を最小にするため、耐熱材料などを今後強化するべきである。(2)記録装置のソフトウェアの問題がまだ未解決であり、平成4年度に組み直す予定である。(3)現在稼働中のA/D変換器が120db、5hzサンプレ-トであるが、予算の調達次算、140db、20hzのものに変更することが望ましい。ソ連:ユジノサハリンスク観測点(YSS)の設置は日ソ米三カ国際協力計画となった。米国の代表機関は地質調査所(USGS)、ソ連の代表機関は科学アカデミ-海底地球科学研究所(IMGG)である。本研究を申請した段階で計画されたのは、米側との覚書で確認済みの、日本側が米側から提供される地震計をYSSに設置することであったが、経済政治的事情のため米側が平成3年夏頃に変更を依頼し、日ソ側が変更を受け入れた。新計画では米側がYSSに地震計を設置するが、ソ連側がデ-タを直接日本と米国を同時に送り、3カ国協力で観測点を運営することである。平成3年8月にゲラ-と森谷がYSSへ訪問し、調査・交渉を行い、日米ソ両側が計画の覚書を結んだ。超高性能地震計(STSー1)型が平成4年3月に設置される予定であり、この報告書を書いた時点で(平成4年3月上旬)、設置が順調に行われることを確認した。
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