研究課題
本研究の主題である「ニジェ-ル川大湾曲部諸文化の生態学的基盤及び共生関係の文化人類学的研究」についての考古学、言語学、技術論、地理学、宗教学、文化人類学、自然人類学等の諸分野からの学際的実地研究が、今年度は前年度にくらべて一層研究分担者相互に密接な関係をもって進められた。すなわち、サノゴの前回につづいての湖沼地帯の長期発掘調査に基づく考古学的研究、バリ-の都市社会における多民族共生と多言語使用の実態についての調査研究、カッシ-ボのボゾ族の漁撈技術と社会変化の継続研究、ソ-のフルベ族の口頭伝承の記号論的分析などは、現地国研究者でなくては行いえないものであり、本研究のような国際共同研究の特色ある成果ということができる。一方、日本側研究者は、応地がニジェ-ル川中部氾濫原の稲作における土地利用状況と稲作技術の地域的差異について広域調査を行い、前回の稲作地帯の土地利用及び技術の地域差との対比を明らかにした。竹沢は、マルカ族稲作民の歴史伝承と社会組織の研究で、前回の漁撈民ボゾ族との共生関係、及び応地による稲作民の土地利用との関係を追求した。坂井の19世紀におけるイスラム都市における世俗権力と聖職者の関係の、貴重な口頭伝承の採集分析に基づく調査は、前回のイスラム都市の歴史研究をさらに深化させたものであり、竹沢の稲作民マルカの研究と、同地域の異なる視角からの研究として評価される。川田は、第1回及び第2回の調査を通じて行ってきた身体技法の伝統的技術における役割の基礎資料となるべき生態計測を、今回は、自然人類学における生態計測の専門家である足立の参加を得て、マリのサバンナ地帯のフルベ族、バンバラ族、ナイジェリアの多雨林地帯のヨルバ族の計280人余りの被験者について行った。この種の学術的調査は、アフリカについては世界でも初のものである。
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