研究概要 |
イタリア国立植物生殖質研究所の若手研究者パンタレオ ディテルリッチ氏の協力を得て,イタリア半島最南部バシリカ-タとカラブリア地方およびシシリ-島全島を縦横にムギ類を中心に植生を調し,栽培方式,利用などについて情報を収集し,種子を採集し,〓標本を作製した。イタリアでは18科892サンプルにおよぶ植物が採集できた。在来品種だけを栽培している畑はみられなかったが,しばしば在来品種と改良品種の混成栽培集団で多数のパンコムギとマカロニコムギの在来品種を採集できた。イタリア半島ではAegilops triaristataとAe.triuncialis,シシリ-島ではAe.ovataがみつかった。中でも,シシリ-島では2ケ所のマカロニコムギ畑の脇でマカロニコムギとAe.oVataの自然雑種を発見した。 ギリシャでは,固有の生態環境をもつカルパトス島,ナクソス島ペロポネス半島北部およびギリシャ北西部を調査した。予期した通の地域あるいは島固有の特徴を観際・比較でき,ムギ類在来種およびその近縁野生植物を中心に総数682サンプルを採集した。エ-ゲ海の2島で収集したAe.biuncialisはエ-ゲ海地域に固有の変種archipelagicaで,過去の調査結果と今回の調査結果により,その分布の全容を明らかにし,分布全域のサンプルを収集することができた。 大田はユ-ゴスラビアを列車と車で予備調査し,ユ-ゴスラビア側研究者と事前に打ち合わせ次年度実施計画を詳細に検討した。 明年度実施のユ-ゴスラビアでの収集品とともにこれらの採集品を本年秋栽培し,その遺伝的特性を詳細に分析するとともに英文報告書にまとめ,採集系統の子孫種子を有用遺伝資源として適切に保存し,世界の研究者が活用できるようにしたい。
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