研究分担者 |
岩田 晃 名古屋大学, 情報処理教育センター, 助手 (40023676)
田中 博 アラスカ大学, 地球物理研究所, 助教授
W.A MATTHEWS ニュージーランド科学産業省, 主任
大竹 武 アラスカ大学, 地球物理研究所, 名誉教授
G. SHAW アラスカ大学, 地球物理研究所, 教授
川平 浩二 富山工業専門高等学校, 助教授
田中 浩 名古屋大学, 水圏科学研究所, 教授 (00115594)
小川 利紘 東京大学, 理学部, 教授 (70011616)
林 政彦 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助手 (50228590)
小池 真 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助手 (00225343)
柴田 隆 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助教授 (70167443)
松浦 延夫 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 教授 (90209495)
松永 捷司 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助教授 (60022729)
近藤 豊 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 教授 (20110752)
岩坂 泰信 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 教授 (20022709)
TANAKA H. Prof, Water Research Institute, Nagoya University
OGAWA T. Prof, Faculty of Science, University of Tokyo
HAYASHI M. Assistant, Solar terrestrial Environment Laboratory, Nagoya University
KOIKE M. Assistant, Solar terrestrial Environment Laboratorty, Nagoya University
SHIBATA T. Assos. Prof, Solar terrestrial Environment Laboratory, Nagoya University
IWASAKI Y. Prof, Solar terrestrial Environment Laboratory, Nagoya University
KONDO Y. Prof, Solar terrestrial Environment Laboratory, Nagoya University
SHOW G. Prof, Geophys Institute, University of Alaska
TANAKA H. Assos. Prof, Geophys Institute, University of Alaska
OHTAKE T. Geophys Institute, University of Alaska
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研究概要 |
近年の成層圏オゾン層の消失は大量のフロンの消費,種々の温暖化物質の増大等によると指摘されているが,いまだにその機構は解明されておらず将来の予測あるいは対策の策定などに大きな問題を残している。また,これまでのオゾン層破壊過程の研究から,大気中のエアロゾルの役割が無視出来ないことが明らかにされ,「不均一過程」に対する関心が高まってきている。 本件級では,オゾン破壊が顕著に生じている極地方の成層圏を調査フィールドに選び,成層圏オゾンの変動およびそれを支配している物理学的機構を明らかにすることを目的とした。また,オゾン破壊反応を加速しいてるエアロゾルの機能を重視する立場をとり,大気化学過程におけるエアロゾルの役割について問題点を整理するよう意図した。 フィールド観測は,スェーデンのキルナにおける気球観測(国際共同オゾン気球観測)および米国のアラスカフェアバンクスにおけるライダー観測が中心であった。 これまでの研究で,オゾンホール形成時に窒素酸化物の多くがエアロゾル化する(極成層圏雲,PSCsの発生)ので窒素酸化物濃度が低下し塩素酸化物のオゾン破壊を促進させることが予想されていた。また,エアロゾルの生成が顕著になる時は,硝酸や水の露点以下に気温が低下する時と考えられていた。これらの仮説を実証することが今後の研究ではもっとも必要なことである。 1991年から92年の冬の観測では,極めて寒冷な成層圏がキルナ上空に出現しオゾン低下が顕著に見られた。このときの観測では,オゾンの減少が起きている場所でNOxの減少も同時に起きており,また採集されたエアロゾルの多くが,硝酸イオンを含んでいた。この結果は,大筋では,オゾン破壊プロセスが予想通りの機構で進行しているのを裏付けたものとして大きな関心を呼んだ。しかし,各々の値の量的な関係に関しては確実な理解が得られてはいない。たとえば,1992年から93年の観測ではNOx濃度の低下が生じたがオゾン濃度の低下は顕著ではなかった。 また,PSCsの生成メカニズムはいまだ不明のままである。多くの仮設のなかで,唯一の一致点は「世界に広く分布している硫酸エアロゾルのごく少数の物が,硝酸を主体とするPSCsの核になる」とする点である。多くの問題は,理論的な予測は困難であり,問題解決の糸口を与える実験や観測に大きな期待がかけられてきた。観測結果は,硝酸イオンを多く含んだ溶液のエアロゾルが結晶状態の物に混存している,硝酸エアロゾルが硫酸エアロゾルと混存している,ほとんどのエアロゾルが硝酸エアロゾルの状態など,いろいろなケースを示しておりPSCs発生のメカニズム解明の糸口となる多くの事実を得た。 低温下で発生するエアロゾル(PSCs)の他に,常に存在している硝酸塩エアエオゾルも大気中のNOx濃度を低下させる機能をもっていることが実験室で確認された。このことから,火山噴火時に急増する硫酸エアロゾルに大きな関心が寄せられるようになった。ピナツボ山の大噴火によって発生した火山雲の観測は,ヨーロッパ,アメリカ,日本では活発だが極地方での観測は極めて手薄であった。1991年から開始したアラスカでのライダー観測では,ピナツボ火山噴火による雲がアラスカまで(遅くとも)この年の12月には達していることが確認され,全地球的なオゾン層破壊を推定する上で貴重な結果を得た。
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