研究概要 |
ドキ=ヌアバレ保護区では、研究代表者(8,1ー9,13)と2人の協力者(8,1ー3,31、12,1ー3,31)が、オザラ周辺では分担者(8,1ー10,14)と代表者(9,15ー10,14)が、ゴリラとチンパンジ-の生態と社会の調査を行った。 ドキでは90,に続き91年も全般的にフル-ツが不作であった。このためゴリラの植物繊維食を主とする採食戦略が明確になった。特に、ミネラル含有量が高いスワンプの草本と、蛋白含有量が高い疎開林のクズウコン科の草本類が安定的食料供給源として重要である。これらが、ニシロ-ランドゴリラのハビタットの決定因と考えられるが、これは、ピグミ-チンパンジ-の場合と同様である。この2種の大型類人猿の熱帯雨林への適応様式が収斂していることは、類人猿の進化と適応を考えるうえで、重要な発見である。 チンパンジ-は広く遊動して乏しい果実を捜す一方で、疎開林でゴリラと同じ草本を採食したが、スワンプは利用しない。昆虫食では乾燥地にも生息する種を選んでおり、チンパンジ-の乾燥地起源が明瞭となった。チンパンジ-は道具使用は、新たに2種類のものが発見できた。また、成長が他亜種に比べ早いことが判明した。 チンパンジ-とゴリラが、同じ果樹上で平和的に採食するのが三度見られた。これは、世界で初の観察である。この2種は潜在的に食物競合者であるが、実質的にはゴリラの菜食偏重性向により競合は避けられることが、これまでの調査でわかっている。これらの観察により、彼らの一般的関係が許容的であることが強く示唆される。 オザラ地区では、密猟により観察成果は乏しかったが、ゴリラが林縁部のクセウコン科をはじめとする草本をよく利用すること、アカネ科の果実が2種によく利用されていることなどがわかった。
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