研究課題
インドネシアでは、その世界有数の恵まれた天然薬物(薬用植物)資源をベ-スとした民間薬および民間医療が、人々の医療に大切な役割を担っているが、それらの天然薬物資源に対する科学的なメスは、これまで殆ど加えられていないのも現状である。本学術調査は、インドネシアにおける未開拓の天然薬物資源の発掘を目的として、第1次(昭和60年度)および第2次(昭和63年度)の東部インドネシア、ヌサ・テンガラ・チム-ル州における調査に引き続き、スマトラ島のベンクル州、リアウ州、および北スマトラ州における民間医療・薬用植物調査を行い、当初の研究計画通り以下に示す成果を得ることができた。ベンクル州では、ブキットバリサン山脈沿いのレジャン・レボン県において計13箇所の村落を訪問し、種々の病気(例えば、マラリア、赤痢、発熱、下痢、腫瘍、リュウマチ等)の治療のドクン(民間医)が用いている計247種類の薬用植物に関する情報を収集した。さらに、それらの情報をもとに計50種の化学研究用薬用植物を採集した。リアウ州では、ブキット・バリサン山脈沿いのカンパル県および湿地帯のインドゥラギリ・フル県において計7箇所の村落を訪問し、ドクンが民間医療に用いている計113種類の薬用植物に関する情報、および18種の化学研究用薬用植物を採集した。さらに、北スマトラ州では、特異な文化を持つことで知られている族の民間医療に関する調査を行い、種々の情報を収集した。今回の学術調査で収集した保存用および化学研究用薬用植物は、インドネシア側共同研究機関である国立生物学研究所・ボゴ-ル植物標本館で同定の後、大阪大学に輸送した。また、民間医療に用いられる薬用植物に関する情報および保存用植物標本は、大阪大学とボゴ-ル植物標本館の双方で保管している。
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