研究概要 |
中南米におけるリ-シュマニア症(「リ症」)とその伝播機構を解明するため,エクアドル共和国の本症流行地で調査を行った.今年度は本症診断法開発の一つとして分子生物学的手法の導入を試み,患者検体の収集を実施した.これらの検体については,PCRによる分析,ドットブロット法等による解析を実施中である.流行地では保虫宿主としてイヌの役割を明らかにすべく,約120頭の肝臓穿刺材料の培養,ろ紙採血等を行なった.培養による原虫陽性は認められなかった.ろ紙採血材料についてはELISA法による抗体検出を検討中である.媒介者のサシチョウバエについて,本症流行地各地で採集して解剖したところ,過去に本症の媒介者と決定されているLutzomyia trapidoiとLu.hartmaniで原虫が分離され,その一部はアイソザイム,モノクロナ-ル抗体,kーDNA等によるcharacterizationを実施中である.エクアドル共和国マナビ県では「リ症」が多発しており,治療薬の不足も手伝って大きな問題となっている.本研究では本症多発の原因を明らかにするため,詳細な伝播疫学的調査を開始した.また治療薬のアンチモン剤に代る薬剤を検討・開発すべく,パ-モマイシンやグルカンタイムのクリ-ムおよびロ-ションを作成し,局部治療薬として効果を判定した.その結果,これらの局所療法は極めて有効であることが判明したので,今後,薬剤の有効濃度その他を検討する予定である.「リ症」潰瘍部におけるバクテリアや真菌感染の状況を調査し,これらの二次感染が診断法や治療に及ぼす影響,また潰瘍形成における役割等についても検討した. 以上のように,今年度は従来の成果に比べると,本症のコントロ-ルや治療に関係した情報が多く得られたことは特筆に値する.
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