研究課題/領域番号 |
02041072
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 流通経済大学 |
研究代表者 |
寺阪 昭信 流通経済大学, 経済学部, 教授 (30008643)
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研究分担者 |
水内 俊雄 富山大学, 人文学部, 助教授 (60181880)
堀川 徹 京都外国語大学, 外国語学部, 助教授 (60108967)
中林 一樹 東京都立大学, 理学部, 助教授 (80094275)
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研究期間 (年度) |
1990
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キーワード | トルコ / ドイツ / アンカラ / 帰還移住民 / 人口移動 / 社会的移動 / 第3次産業 / Social migration |
研究概要 |
本年は上記の研究課題に対して、研究費の枠が予定していたよりも少なかったために、西ドイツを調査することは出来ずに、トルコのみに調査を限らざるをえなかった。トルコでは3大都市のイスタンブル、アンカラ、イズミルにおいてアンカラ大学のケレッシュ、オトカン教授の協力を得て調査を行った。 現在、トルコから西ドイツへの労働力の流出は、大都市のみならず地方都市、農村を含み、空間的には西部のみならず、ほぼ全国から行われている。このように広域にわたるために流出者を出身地の側から捕らえることは困難である。したがって、移住民の集積地である西ドイツの諸都市において捕捉することが有効であるが、それは次回の課題となった。しかし、国の行う人口統計的なレベルでの官庁関係の資料収集は行うことが出来た。また移住先は必ずしもドイツのみに限らず、近年ではスゥエ-デン、オランダ、スイス、ベルギ-、フランスにも多くみられ、西ヨ-ロッパ諸国に共通する問題として考察する必要があることも分かってきた。 一方、西ドイツからの帰還した移住民は主として大都市に集中している。しかしながらサンプル的な聞き取りからは、彼らが大都市の市街地の内部で、特定の地域に集中して住んだり、特定の職種に偏って就業しているという傾向を見出すことは出来ない。また、西ドイツにおける労働も、鉱業、建設、土木や工業でも単純労働に従事することが多く、先進工業国の高い技術を身につけて、帰国後にトルコの産業に技術移転を図るというケ-スは希である。それよりも、もち帰った資本を元手にしてサ-ビス業(タクシ-など)や零細な小売業など工業に比べて比較的容易に参入出来る第3次産業に関する仕事を始めることのほうが多い。 それにもかかわらず、社会的移動としての階層が上昇した事実を示すものとしては、帰還者の子弟がかなりの割合で大学に進学しているという実態が分かった。それゆえ、彼らにとって第二世代以降の若い人々への言語教育の問題が重要となっている。これはトルコ人としてのアイデンティティ-を維持するうえで基本的なこととなる。このような状況のもとで、大規模な調査母集団を見付けることは現段階ではかなり困難であり、短時間ではアンケ-ト調査を行うことはできなかった。これらの問題への取組は来年度以降の課題として残されてる。 もっとも調査の中心となったのはアンカラである。ここは近年における急速な人口増加が引き続きみられ、それにもとづく市街地の拡大、すなわち、住宅問題が深刻である。ケントコ-プを中心として、計画的な大規模な郊外住宅団地の開発や工業団地の建設が周辺部において精力的に行われている。他方、伝統的な無秩序な質の悪い住宅開発、ゲチェコンドゥも広がっいる。さらに市街地の再開発も盛んである。どの開発が帰還した移住民との関係が強いかについてはいまのところ不明である。インフォ-マルセクタ-の活動範囲がかつてより狭くなっているようにみえるが、そのことと帰還移住民との関わりもこれからの課題である。 イスタンブルはトルコ最大の都市であるが、その人口増加率は近年またいっそう高まっている。アジア側についていえば、市街地はイズミットとの間でほとんど連続するほどである。ヨ-ロッパ側においても同じ程度に市街地の拡大は著しい。この急激な都市域の膨張に対して、帰還移住民の果たした役割は人口規模が大きいだけにより分かりにくい。ただし、この都市がトルコにおける第1級の工業都市であり、あらゆる種類と規模をもっていることは、一つの方向を示すものと考えられる。またインフォ-マルセクタ-の活動が大きい。 イズミルも相変わらず、高い人口増加率を示している。地形的な制約から、他の都市に比べて既存の市街地周辺には新たな住宅開発の余地は乏しく、かなり遠方に大規模な団地の開発が行われている。相対的には帰還移住民よりは国内からの移住民の割合が大きいように見える。 かくして、トルコと西ヨ-ロッパ諸国との両面からの詳しい調査が必要とされる。
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