本年度は、ケタル国ウンム・ル・マ-遺跡における古墳群の発掘調査を実施し、またパキスタン国シンド地方における関連遺跡の踏査、関連遺物の調査を行った。 ウンム・ル・マ-地区においては、2つの大規模な古墳群のうち各2基、計4基を精査し、また周辺の一般踏査を行った結果、次の諸点が明らかになった。 封土をもった古墳は、カタル半島では現在まで調査例がなく、従ってその構造が報告されたことはなかったが、今次の調査により、半地下式墓室を主体とする高墳式墳墓であることが確認された。また埋葬の型式、出土遺物などより、それは我々の予想よりも新しく、紀元後3〜4世紀のものと推定されることとなった。しかし同型式と思われる未調査の遺構多数が半島内で知られていることから、カタル半島の歴史の各所に見られる空白の時代の1つを埋めるべき新資料の発見がなされたということができる。 今後は、同国内及び周辺地域において、より多くの同時代資料を入手する必要があり、それによって湾岸全体の考古学的編年を組み立てていくことが可能となるであろう。 パキスタン国シンド地方においては、前3〜2千年紀における遺跡を踏査し、考古局等の蔵品を調査した結果、特に土器、石製容器などの資料に湾岸地域の同時代資料との大きな類似性・関連性を示すものが看取された。今後デ-タを増やすことにより、湾岸海上交易の実態が、一層明らかになるものと期待される。
|