研究課題
国際学術研究
[平成2年度]中国社会科学院世界宗教研究所(北京)において、当該地域に関する資料を収集し、さらに調査の実施方法などについて助言を受けて現地へ移動した。本調査は中国社会科学院の全面的支援を得ているが、特に研究協力者として下記の中国側研究者5名が全行程に同行し、日中の仏教・宗教の研究者が現地において研究成果を交換し、討議を重ねながら踏査を実施した。中国社会科学院世界宗教研究所 楊曾文氏中国社会科学院世界宗教研究所 高洪氏陜西省社会科学院歴史研究所 暢耀氏陜西省社会科学院歴史研究所 陳景富氏陜西省社会科学院歴史研究所 王亜栄氏調査地の概略を挙げれば以下のとおりである。終南山・大興寺・西安碑林・興教寺・香積寺・大雁塔・広仁寺・華厳寺跡(上記寺院の所在地は西安市及び長安県)千仏鉄塔(咸陽)三陽寺塔(高陵)薬王山石刻(耀県)精進寺塔(澄城)飛泉寺(白水)昭仁寺(長武)太平寺宋塔(岐山)法門寺(扶鳳)上・下悟真寺(藍田)八雲塔(周至)等の、陜西省中・南部の寺院・石窟において、各自の分担課題に従って調査活動を行った。其の結果、特に法門寺文物の資料価値の高さを認識するに至った。1988年11月に法門寺出土品の一般公開が開始されたが、同寺文物について北京大学の李羨林教授は、「半坡遺跡・秦俑の発見に次ぐ、第三の重要文物の発見であり、歴史・文化・政治などの研究に大きな貢献をなすものである。)と高く評価しているが、この度の現地調査において其の指摘に誤りのないことを確認したと同時に、加えて陜西省における仏教の展開と発展について、シルクロ-ドの遺跡としての大仏寺・慈禅寺が極めて重要な位置にあることを明確に把握し得た。[平成3年度]本年は、陜西省(平成2年度調査地域)と黄河を挟んで相対する山西省の調査を実施した。中原の仏教は、山西省の南部に先ず伝わり、その後次第に北上して行くが、その証左となるのが東アジアの仏教聖地として名高い「五台山」である。「五台山」はこれまで中国政府の政策により、外国人には未解放の地域であったが、1985年に解放となり、さらに1989年には「五台山文物研究所」が開設され、研究調査の面において大きく伸展した。近年には五台山の仏教について数多くの研究成果が公刊されており、本調査ではそれらを参考資料としたうえで、仏教の伝播経路を逆に辿り、未調査地域である山西省南部を踏査した。本調査は中国社会科学院の全面的支援を得ているが、特に研究協力者として下記の中国側研究者3名が全行程に同行し、日中の仏教・宗教の研究者が現地において研究成果を交換し、討議を重ねながら踏査を実施した。中国社会科学院世界宗教研究所 丁明夷氏山西省社会科学院五台山研究会理事 崔正森氏山西省社会科学院助理研究員 温金玉氏調査計画に基づいて太原市周辺より調査を開始し、次いで山西省の南部地域に範囲を広めた。調査地域内で実地踏査した寺院名等を以下に挙げる。大仏寺・太山寺・双塔寺・多福寺・奉経寺・天龍山石窟(太原市)、玄中寺(交城県)、香岩寺(柳林県)、慈相寺・鎮国寺(平遥県)、千仏崖(霍県)、大雲寺(臨汾県)、普救寺・万固寺・栖岩寺塔(永済県)、海会寺(陽城県)、開化寺・定林寺(高平県)、南・北吉祥寺(陵川県)、正覚寺・法雲寺(長治県)、龍門寺・金燈寺・同寺石窟(平順県)、石馬寺(昔陽県)などの実態調査を実施した。仏教が中国に伝播した経路について、従来はシルクロ-ドを経由して、長安・洛陽などの中原に伝わり、その後、黄河の下流地域や淮河の流域を経て長江流域に伝播したと考えられてきた。仏教初伝の寺と言い伝えられている洛陽の白馬寺がその経由を示している。本研究では、寺院・石窟・碑文などの文物について現地調査を実施した結果、特に南北朝時代・隋代・唐代における仏教の中国への流入経路が明かとなり、各時代における仏教の展開形態が明確に把握できた。
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