研究分担者 |
高岩 義信 高エネルギー物理学研究所, 物理研究部, 助手 (10206708)
DANIEL Green フェルミ国立加速器研究所, Staff scie
浅井 慎 広島工業大学, 電機工学科, 講師 (40192926)
新井 康夫 高エネルギー物理学研究所, 物理研究部, 助手 (90167990)
岩崎 博行 高エネルギー物理学研究所, 物理研究部, 助手 (40151724)
堺井 義秀 高エネルギー物理学研究所, 物理研究部, 助教授 (90170571)
大須賀 鬨雄 高エネルギー物理学研究所, 物理研究部, 助教授 (20168925)
海野 義信 高エネルギー物理学研究所, 物理研究部, 助教授 (40151956)
池田 博一 高エネルギー物理学研究所, 物理研究部, 助教授 (10132680)
藤井 啓文 高エネルギー物理学研究所, 物理研究部, 助教授 (60013439)
稲葉 進 高エルネギー物理学研究所, 物理研究部, 助教授 (10013434)
尼子 勝哉 高エネルギー物理学研究所, 物理研究部, 助教授 (50044772)
大杉 節 広島大学, 理学部物理教室, 助教授 (30033898)
渡瀬 芳行 高エネルギー物理学研究所, データ処理センター, 教授 (70018662)
OHSKA Tokio Kenneth National Laboratory for High Energy Physics (KEK)
GREEN Daniel Fermi National Accelerator Laboratory
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研究概要 |
この学術調査の目的は,米国で建設中の超伝導超大型加速器SSCでの素粒子実験を実現し40TeVの陽子陽子衝突によるヒッグス粒子の発見などTeV領域の素粒子物理の研究をめざすための準備研究の一環である。1989年に結成されたSDC実験は国際協力で全世界から研究者が集まって行なわる。日本からも大規模な参加を計画している。この実験計画は,技術開発→測定器設計→測定器建設→物理実験→データ解析,と10年以上に亘るものであり,現在測定器設計まで進んだ。測定器建設の見積りは700億円である。SSCでの実験ではエネルギーや衝突頻度が格段に高い為,最先端技術を使った高速エレクトロニクス,大量データ処理,並列計算機技関を用いる。また素粒子反応の高度しシミレーションも必要である。この学術調査はそれらのデータ処理と計算機関連の技術開発を目指し,その成果をSDC測定器設計に取り込んだ。この学術調査による渡航旅費等の援助と,従来からの文部省-米国DOE間の日米高エネルギー物理学協力事業による開発研究費の援助のもとで,平成2-4年の間に準備調査活動における大きな進歩が得られた。それらは多岐にわたるが分類すると以下のようになる: 1.実験装置の設計:1984年からの測定器技術開発や数度の国際会議を経て,実験装置の大きな輪郭は形成されてきた。ヒッグッス粒子の生成など各種素粒子反応を計算機を用いてシミレーションして目指す物理が実験装置案で出来ることを確認した。一方実験装置を構成する粒子検出器の選択にはいろいろな案の中から,テスト実験結果から推定される性能,利/欠点,測定器全体との整合性,建設/組立,建設費などあらゆるファクター総合判断し決定した。日本の提案した検出器案でもかなり採用された。SDC実験装置の設計は1992年4月完成した。 2.高速エレクトロニクスの開発研究:SSCクラスの実験装置では数十万チャンネルに及ぶ検出器からの信号を高速同時処理する。このために読出し用電子回路には低消費電力化と耐放射線性をもつ特殊超LSI技術を駆使する。日本ではNTTの協力を得て,シリコン検出器用の電子回路,飛跡検出器用のデジタル式時間測定回路を設計し,プロトタイプ製作とテストを行った。特にデジタル式時間測定回路TMC(Time Memory Cell)はCMOSメモリー技術を時間差測定に巧みに応用したもので,特許の申請も出した。4チャンネルで奥行が1マイクロ秒のチップが完成し,時間精度0.52ナノ秒が得られた。TMCカマックモジュールも完成し,米国の関係大学にも送られ使われている。1991年9月にはこのTMCチップのSDC実験のストローチェンバーへの採用が決まっている。 3.データ処理の開発研究:各検出器からの実験データは約400本の光ファイバーケーブルを通して,バッファーメモリーと高速スイッチ群から成るイベントビルダーに送られる。そこで並列入力したデータを一塊りの事象シリアルデータにまとめて,オンライン並列計算機ファーム(処理能力は十〜百万MIPS)に送る。米国のFermilabと共同してこのイベントビルダーを検討し,SDC実験用の基本設計を作った。3GHzのデジタル信号を扱える高速スイッチを富士通と開発しテストに成功した。 4.シミュレーションの開発研究:40TeVの陽子陽子衝突現象を,QCDなどの標準理論による計算機シミレーションプログラムの開発を進めた。実際にはGEANTに基づくSDCグループのめざす統一されたシミレーター「SDCSIM」を米国研究者と共同して構築した。それらは国内の研究所,大学でも使えるようになった。特に広島工大,東京都立大,KEKなどでワイヤーチェンバーやミューオン検出器のシミレーションができた。 5.計算機技術の開発研究:SSC実験データ解析のために,生データ,物理解析用圧縮テープ(DST)の記録(年間1PByte程度)と世界の研究者によるデータへのアクセスを可能にするオフライン計算機システムを設計した。ソフトウエアとしては,DST作製プログラム,解析/シミレーションの全体の概念設計を行った。将来の基本となる並列計算機システムのテストケースとしてDECstation,HP9000/730,SGI Irisからなる計算機ファームをKEKに設置し,シミレーションなどの実用に使えるまでにした。
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