研究課題
平成2年度に提出した計画したがい、3年計画の第1次として、中央アンデス南部の高地都市クスコと、中部海岸の小都市カンタにおいて調査を実施した。その成果を「計画」に対応させて記すと以下の通りである。歴史 1.1952年の大地震を契機とするクスコ市の変容:(1)白人オリガルキ-の解体、(2)周辺農村地帯からの人口流入、(3)海岸部を含む他県からの人口流入、に起因する都市住民の意識・行動様式の多様化と階層区分の弱体化。2.地方主義とインカニズム:(1)中央集権化に対するクスコ地方主義の高揚と、(2)異質化した住民意識の統合に作用する、都市住民の歴史的アイデンティティ-としての「インガ帝国」。社会 1.農民の都市移住への経路:都市ー農村の直接的な関連よりも、他地域への季節労働・出稼ぎの経験が、周辺農民の都市クスコへの移住・定着を進行させる。2.他県移住者と集団化:(1)地方都市クスコの排他性、(2)同県出身者の相互扶助の必要性、に起因する移住定着者の集団形成への指向。経済 1.クスコの市場における女性活動:女性の社会的ネットワ-クによって維持されるクスコの市場経済。宗教 1.クスコの民衆カトリシズム:(1)農村からの移住、(2)都市環境への農民信仰の適応、としての聖十字架の祝日の興隆。2.クスコ市の民間医療と呪術:(1)民衆カトリシズムによって正当化され、かつ(2)都市住民意識に適応したものとしての、農村伝統の医療および呪術の盛行。3.海岸小都市の聖ロサ崇拝:従来指摘されてきた地母神と聖母マリアの習合のみならず、聖女崇拝一般に潜在的な先スペイン要素の存在。
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