研究分担者 |
PAIROJKUL Ch Khon Kaen大学, 医学部, 助教授
THAMAVIT Wit Mahidol大学, 医学部, 助教授
伊藤 誠 名古屋市立大学, 医学部, 助手 (90137117)
白井 智之 名古屋市立大学, 医学部, 助教授 (60080066)
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研究概要 |
1.コンケン大学で摘出された肝内胆管癌41例の病理組織学的特徴を対照群の日本の症例(解剖例39例)と比較検討した。タイ症例は男26例,女17例で平均年齢は各々52歳と56歳と日本例の62歳と68歳に比して約10年早い発生が示された。組織学的には両群は概ね同じ形質発現型を呈したが,タイ症例には対照群にはなかった髄様腺癌に類似した低分化腺癌が7例であり,さらに非癌部肝臓では胆管には上皮の過形成を伴った慢性炎症性変化が特徴的であった。 2.コンケン地方の低所得者に常食されている発酵魚であるPlaーraについて発癌物質であるアフラトキシンB1,B2,G1,G2ステリグマトシスチン,オクラトキシンとジエチルニトロソアミン(DEN)とジメチルニトロソアミン(DMN)の含有量を測定したが,いずれも測定限界以下で検出されなかった。 3.タイ北東部の肝内胆管癌16例,肝外胆管癌34例,肝細胞癌1例,その他43例の合計94例の血清中でHBs抗原の陽性者は5例のみであり,B型肝炎ウイルスと胆管癌との関連性は認められなかった。 4.タイ東北部の胆管癌,胆襄炎患者の血清中のOV成虫体抗原に対する抗体価を測定したところ,胆管癌全例が抗体陽性であり,しかも他疾患よりも有意に高い抗体価を示した。 5.肝吸虫の治療薬プラジカンテルは極めて高濃度でラット肝発癌を促進作用した。ヒトでの危険性はきわめて低いと考えられた。 6.実験的にDMNハムスタ-肝内胆管癌の発生が胆管結紮によって著しく促進された。以上,タイ東北部の胆管癌の高率発生には肝吸虫感染に伴う胆管上皮の増殖が関与していることが明かとなった。しかし発癌物質の関連についてはさらに検討が必要と考えられる。抗OV薬は発癌リスクの軽減に極めて有用である。
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