研究分担者 |
鎌田 勉 北海道大学, 歯学部, 助手 (20091431)
浅沼 厚 鶴見大学, 歯学部, 講師 (90089392)
野田坂 佳伸 北海道大学, 歯学部, 教務職員 (30184005)
堀川 順生 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教授 (50114781)
松村 澄子 山口大学医療技術短期大学部, 助教授 (30136204)
下澤 楯夫 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (10091464)
谷口 郁雄 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (60014255)
孫 心徳 中国華東師範大学, 生物系, 教授
O'NEILL WILL アメリカ合衆国ロチェスタ大学医学部, 教授
SCHEICH HENN ドイツ, マグデブルク神経生物学研究所, 教授
EHRET GUMTER ドイツ, ウルム大学・医学自然科学部, 教授
JEN PHILIP H アメリカ合衆国, ミズーリ州立大学・芸術科学部, 教授
SUGA Nobuo アメリカ合衆国, ワシントン大学・生物学部, 教授
XINDE Sun East China Normal University, Department of Biology, Professor
WILLIAM E. O'Neill Rochester University, School of Medicine, Professor
GUNTER Ehret University of Ulm, Faculty of Science and Medicine, Professor
HENNING Scheich Institute of Neurobiology, Magdeburg, Professor
PHILIP H. -S. Jen University of Missouri, College of Art and Sciences, Professor
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研究概要 |
本研究では中南米産ヒゲコウモリの大脳皮質の構造がエコーロケーション行動のための音声情報解析が行いうるように配列されていること,および,その配列には個体差があり,その個体が発する音声の特徴に相応しているという知見をもとに,他の地域に棲息するコウモリにも同様なことが言えるかどうか比較研究することであった。まず,上記知見の研究について世界的権威である合衆国ワシントン大学Nobuo Sugaを中心にして本研究代表者および分担者との間で研究交流を行い,本研究に関する最新の情報を得た。ヨーロッパ産コウモリについての知見を得るため,また,HRP法・2DG法などによる大脳の機能構造の研究についての情報を得るためドイツより,H.Scheichを招へいし,本研究に関わる研究手法などの情報を得た。 次に派遣による成果としては分担者を合衆国Sugaのもとに派遣し中南米産コウモリのエコーロケーション音の他にこれまで解析されなかったコミュニケーション音の記録・解析を行い,distresscall,警戒音,攻撃威嚇音,social callなどの音声学的解析および行動学的意義を研究した。また神経生理学実験を行うため同国Sugaのもとで,ヒゲコウモリ大脳皮質聴覚野の異なる部位のニューロン間の発火の同調性がみられるか否かについて神経生理学的研究を行い,極めて小数ではあったが,そのような同調性を示す例がみい出された。たゞし,このことから大脳における音声情報認識のような統合機能が同調性によってなされているとまで断言できるには至らず,今後さらに研究を進める必要があると思われた。上記のコミュニケーション音の分類および音声学的解析をもとに,この音声の大脳皮質における情報処理について神経生理学的研究がなされた。北米産のいわゆるFMコウモリの大脳における音声情報解析機構解明について分担者と合衆国インディアナ大学との間で研究を行った。このコウモリの大脳皮質ニューロンの発火は刺激音の頻度によって遅い間際で刺激される時に反応するものと早い間際で刺激される時に反応するものがあることがみい出された。このことはコウモリの標的追跡行動において標的から遠くにいる時には低頻度で発声し,標的近くになると高頻試で発声するという事実と相応しており興味ある知見であると思われた。また同じこのFMコウモリについて鎌田を合衆国ミズーリ大学に派遣し,聴覚系各中枢における方向感受性についての研究を行った。その結果,下丘,大脳皮質ニューロンは反応側から来る音に音受性が高いものが多いのに反して,小脳,上丘,橋には正面から来る音に感受性が高いものが多くなることがわかり,このこともコウモリの標的追跡行動と相応して興味ある知見である。このようにFMコウモリではCF-FMコウモリ(ヒゲコウモリなど)と比較して神経生理学的な機能構造が多様であり,相違点があることが示唆された。ヨーロッパ産コウモリについては鎌田,野田坂をドイツEhretのもとに派遣して研究を行った。特に同じ哺乳類で比較的近縁のマウスをモデルとして,大脳皮質と視床間のニューロンの接続についてHRP法などによる研究を行い,両者の接続について新しい知見を得た。また免疫組織化学的研究法についても研修した。 日本産コウモリについては発声音の音声学的分析,聴力曲線の解析などを行った。すなわち松村は中南米産ヒゲコウモリと同様のCF-FMを発するキクガシラコウモリの音声を解析し,その周波数が日本各地の地域によって異なること,沖縄諸島におけるその分布からそれらの間の系続関係が示唆されることを明らかにした。鎌田はモモジロコウモリ,ユビナガコウモリ,アブラコウモリなどFM音を発するコウモリの音声を分析し,北米産コウモリと比較した。キクガシラコウモリの聴力曲線については谷口がbehaviorによるデータを出している。 以上のようにして,これまで大脳機能構造が詳しく調べられた中南米産ヒゲコウモリについてもさらに詳細な知見がえられたばかりでなく,これとの比較において北米産・日本産CF-FM,FMコウモリについても知見をうることができた。
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