研究課題/領域番号 |
02044007
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
谷口 和弥 北海道大学, 理学部, 教授 (40028204)
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研究分担者 |
BEACHEM J.M. バンダービルト大学, 医学部, 准助教授
MARDH Sven ウプサラ大学, 医学部・生理化学部, 准助教授
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研究期間 (年度) |
1989 – 1991
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キーワード | Na^+,K^+ーATPase / H^+,K^+ーATPase / イオン輸送ポンプ / -K^+-ATPase / Transport ATPase |
研究概要 |
Na^+ポンプとH^+ポンプのエネルギ-変換と調節の分子機構 1.Na^+ポンプに蛍光供与体・受容体となる2種類のケイ光プロ-ブ(BIPMとFITC)を導入した標品を用い両プロ-ブ間のエネルギ-移動をNa^+ポンプ反応サイクル中の反応中間体蓄積条件下で測定した。その結果両プロ-ブ間のエネルギ-移動はNaE_1からE_1P及びE_2Pの形成に伴って全体としては増加の方向へ、E_2PからKE_2更にNaE_1への変化でエネルギ-移動が減少する方向に変化することが明らかにされた。この間に両プロ-ブ間の流動性はほとんど変化しないことも明らかになった。一方BIPMSANMを導入した標品を用いて同様の解析を行い、現在BIPMーFITCプロ-ブ間のエネルギ-移動と逆の変化が検出され始めている。目下、これらのエネルギ-移動がプロ-ブ間距離の変化を示しているのか否かを研究している。 2.Na^+ポンプとH^+ポンプのリン酸化と脱リン酸化及び構造変化を比較した。その結果、Na^+ポンプに関してリン酸化及び脱リン酸と構造変化は強く共役しておらず、構造変化を反映するのは、Na^+とK^+のNa^+ポンプ分子内の移動であることが強く示唆された。従来ポンプの反応機構は化学的に安定な反応中間体EPのADPとKに対する反応性の差をメルクマ-ルに解析されてきた。E_1P及びE_2Pは共にアスパルテイルリン酸結合をもつ安定な化学種である。しかし我々の従来までの研究成果は、E_1P及びKE_2にそれぞれコンフォメ-ション的に区別できる状態の存在することを強く示唆している。実事、Na^+とK^+のポンプ分子内の移動は連続した現象であり、イオン輸送の機構を解明するためには、我々の発見したE_1PやKE_2におけるイオンの分子内移動を定量化する事が重要と思われる。 H^+ポンプの構造変化を内因性トリプトファン残基の蛍光、BIPM及びFITCプロ-ブを導入した標品を用いて研究した。トリプトファン(Trp)の蛍光はH^+結合酵素(HE_1)がMgATPと反応し蓄積した後に増加する事が示唆された。K^+結合酵素(KE_2)のTrp蛍光はHE_1のそれと区別できなかった。一方BIPM蛍光の減少とEP形成の増加の時間経過はほぼ一致した。KE_2形成に伴いBIPM蛍光はわずかに増加した。従ってTrp蛍光とBIPM蛍光はすでにNa^+ポンプで我々が明らかにしたようにH^+ポンプにおいても異なった状態を反映していることは明白である。 3.Na^+ポンプのATP結合部位付近をpyrdoxal phosphateでラベルしpyridoxalケイ光でポンプの構造変化を追跡可能にする事を確立することを試みた結果、pyrloxal phosphateがNaE_1ではLys664にKE_2ではLys469とLys664に導入されていることが示唆された。現在この点を確認中である。またこの標品はATPからのEP形成能を欠くがactyl phosphateによるリン酸化能はあまり阻害されていないことが示された。 4.Na^+ポンプにおけるリン脂質の役割を構造変化を目安に研究した。その結果、BIPMプロ-ブ(Cys966)近くの微少環境はphospholipase処理の感受性であるがFITC(Lys501)プロ-ブ近くのそれは非常に安定であることが示された。従来リン脂質がポンプタンパクのどの部位に存在するかは不明であったがこれらの研究でCys964の近くにリン脂質の存在することが示唆された。 5.Na^+ポンプとH^+ポンプの調節がポンプのc末端付近に存在するArgArgXSer配列のSer残基のリン酸化によって調節されるか否かを明らかにするため、この部位をリン酸化すると思われるCyclicAMP依存プロテインキナ-ゼを我々がNa^+ポンプを精製しているブタ腎赤外髄質から精製した。この標品を用いるとNaポンプのα鎖当り約1モルのリン酸化が生じた。目下本キナ-ゼによるNa^+ポンプのリン酸化による活性変動及びリン酸化部位の同定を試みている。
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