研究課題
軽水炉の炉内構造物あるいは未来型の核融合炉などにおいて、高速中性子及びγ線の照射下で、水環境に爆される条件が少なくない。このような条件下で、材料の質的変化及び環境の質的変化を伴った条件下での応力腐食割れ挙動、すなわち照射誘起応力腐食割れが大きな関心を向けられている。本年度は、対象材料として市販級のオ-ステナイトステンレス鋼304鋼及びその極低炭素材、極低不純物材、さらには、SUS316及び347材について、高温高圧水中(288℃、8ppmD.O)においてひずみ速度1.33×10^<ー6> 1/Sの条件下で低ひずみ速度試験を実施し、割れ感受性について評価した。なお、ここで採用した材料と同材は、現在MITRにおいて照射中であり、本年の結果は、参照デ-タ又は比較デ-タとなる。得られた結果を列挙すれば、以下の通りとなる。(1) 溶体化条件下においては、低炭素あるいは極低炭素、極低不純物材は、粒内応力腐食割れ感受性が高くなる。(2) 650℃×50hrの鋭敏化熱処理条件下では、高炭素材料、すなわちEPR試験で高い再活性化率を示した材料など、割れ感受性が高い。(3)鋭敏化材に、さらに850℃×1hr及び10hrの焼戻し熱処理を加えた場合には、SUS316L及びSUS347L材は、粒内割れ感受性を示すようになる。(4)焼戻し熱処理条件下における粒界応力腐食割れ感受性は、材料中のSi、P及びSに大きく影響され、感受性をSi+10(P+S)の形で表示できる事を示した。(5) 粒界におけるこれらの不純物の偏析の検知のための電気化学的計測装置の設計を完了し、製作に入る。これは次年度MITRにおいて照射材について計測する。
すべて その他
すべて 文献書誌 (3件)