研究分担者 |
渡辺 豊 , 学振特別研究員
坂 真澄 東北大学, 工学部, 助教授 (20158918)
HWANG I.S. マサチューセッツ工科大学, 原子力工学科, 助手
KOHSE G.E. マサチューセッツ工科大学, 原子炉実験所, 助手
HARLING O.K. マサチューセッツ工科大学, 原子炉実験所, 教授
BALLINGER R. マサチューセッツ工科大学, 原子力及び材料科学科, 助教授
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研究概要 |
供試材及び熱処理条件 供試材はオ-ステナイト系ステンレス鋼SUS304及びSiを添加した材料であり、化学組成を表1に、熱処理条件を表2に示す。A及びBは、照射誘起Cr欠乏層を模擬するため、低温鋭敏化熱処理を施した後に試験に供された。また、A材はBrummerらにより、C,D及びE材は八巻によりそれぞれ低ひずみ速度試験(SSRT)に供されたものである。F,G及びH材は、Si偏析を模擬するためにSiを添加した材料である。 電気化学的再活性化率の測定 Cr欠乏層を高感度に測定するためにJISG0580に規定される標準EPR試験の試験条件に改良を加えた改良型EPR試験を行った。改良型EPR試験における溶液は1NーH_2SO_4+10g/lKSCNであり、ー600mV(SCE)で5分間のカソ-ド処理を施した後、電位掃引速度20mV/minで掃引した。折り返し電位は200mV(SCE)とし、試料表面は粒径6μmのダイヤモンド・ペ-ストにて鏡面仕上げをした後試験に供した。 定電位電解試験 不純物偏析に起因する粒界腐食感受性を評価するために40℃、5NーH_2SO_4水溶液中での定電位電解試験を行った。試料表面を粒径6μmのダイヤモンド・ペ-ストにて鏡面仕上げをした後に、過不働態域である1050mV(SCE)に1時間保持し、保持中の電流密度を計測し電荷量を求めた。 低ひずみ速度試験 B材について温度288℃、溶存酸素濃度20ppm以上の高純度水中において、ひずみ速度6.67×10^<ー7>で試験片が破断するまで試験を行った。試験後、破断面を観察し粒界破面率を測定した。 粒界化学計測による応力腐食割れ感受性評価 標準EPR試験における再活性化率と、Coiour試験における最大侵食深さによって、粒界応力腐食割れ(IGSCC)感受性の評価を行った。これによるとCoriou試験による最大侵食深さが10μm以上、標準EPR試験による再活性化率が0.1%以上のところでIGSCCが発生している。しかし、改良型EPR試験の結果と考え合わせると、標準EPR試験の検出限界以下のCr欠乏層であってもIGSCCに影響を及ぼすものと考えられる。また、Coriou試験は破壊試験であるのにたいし、本研究における定電位電解試験は非破壊的に粒界下純物偏析を計測・評価しうる点が有利であると考えられる。 改良型EPR試験における再活性化率と、定電位電解試験による電荷密度値によりIGSCC発生領域を示した。IGSCCは、再活性化率が約2%以上電荷密度が約20mC/cm^2以上の領域において発生しており、IGSCCが、Cr欠乏層及び不純物偏析の両方によって影響されることが理解できる。従って同図により、温度288℃の高温高水圧中におけるIGSCC感受性を評価できる。
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