研究概要 |
近年、微生物の培養を目的としたバイオリアクタ-に関する研究が盛んに行われている。バイオリアクタ-内では、微生物並びにその代謝物を含む非ニュ-トン性の液体中に、微生物への酸素供給のため多量の空気を吹き込む必要がある。この操作は気液間の物質移動を目的として行われるため、気液界面積に関する情報が極めて重要となる。代表的なバイオリアクタ-としては通気撹拌槽があるが、撹拌槽内気泡径分布に詳細な検討を加えた報告は数少ない。わずかに研究分担者らが、直径61cmのラッシュトン型6枚羽根ディスクタ-ビン通気撹拌槽について、撹拌速度並びに通気流量等の操作条件に加え、気体の分子量、液体の二酸化炭素による飽和等の影響を検討しているに過ぎない。 本年度は気泡径に及ぼすスケ-ルアップの影響を検討することを第一の目標とした。すなわち 研究分担者らにより、確立された、英国バ-ミンガム大学既設の2連フラッシュを利用した直接写真撮影法(Proc.Euro.Conf.on Mixing,Toulouse,France(1985))により、これもバ-ミンガム大学既設の直径49cmのラッシュトン型6枚羽根ディスクタ-ビン通気撹拌槽に対し、空気ー水系における気泡径分布の測定を行った。すなわち単一孔ノズルより空気を純水中に通気させ、撹拌速度を直径61cmの場合と同一の100,125,150rpmとし、通気量を単位体積当り、一定並びにガス空塔速度一定の2通りに変化させ、気泡の撮影を行った。この結果極めて鮮明な写真撮影に成功し、ネガフィルムを山形大学へ持ち帰ったが、プロジェクタ-によりネガフィルムを拡大投影し気泡径を計測するための装置を現在製作中であり、空泡径分布を求めるには至っていない。装置の製作が完了次第、気泡径の測定を行いその分布を求め、気泡径をスケ-ルアップするときの撹拌速度並びに通気量の影響を検討する。 また研究分担者らが以前得た実験デ-タを基に、通気撹拌槽内各所における気泡径分布並びに気泡密度より、槽内各所のガスホ-ルドアップを計算し、さらに羽根から槽壁に向かう時の気泡の合一速度を求める手法を提案し、操作条件の合一速度に及ぼす影響に検討を加えた。この結果は、今年の9月にベルギ-で開催される第7回ヨ-ロッパ液体混合会議(7th European Conference on Mixing)において発表する。 一方、これと並行して山形大学においては通気撹拌槽内において高粘度液中へ気体を通気した場合の気泡径に関する基礎的なデ-タを得るための実験を行った。まず初めに粘度の異なる液体を数種用意し、その静止液体中に空気を通気した際の気泡径を測定した。その結果粘度が高い程、また通気量が多い程、気泡径は大きくなることを明らかとし、気泡径を粘度並びに通気量と相関した。さらに槽内の流れが気泡径に及ぼす影響を検討するため、代表的な流れ場の1つである単純剪断場中に発生させた気泡の大きさを測定することを試みた。単純剪断場を作り得ると思われる装置を幾つか試作した所、平低円筒槽内に槽低より数cmの高さに槽径よりも若干小さめの直径の円盤を設置し、これを回転させることにより中心近傍の同一半径位置で槽低よりある程度の高さまでは単純剪断場とみなし得る流れが構成されていることが、トレ-サ-粒子法により速度分布を求めることにより明らかとなった。ただし本研究では円筒槽の直径は14.4cmである。この流れ場に空気を通気した所、剪断速度の増加に伴い気泡径は小さくなることを明らかにした。この傾向は液粘度が大きくなるほど大きくなった。さらに気泡はある剪断速度までは常に一定の大きさであるが、ある剪断速度以上になると大きさの異なる気泡が生成されること、その限界の剪断速度は粘度が小さくなる程、また通気流量が小さくなる程大きくなることが明かとなった。
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