研究課題
〈CdSe薄膜におけるホットエレクトロンの非平衡分布〉フェムト秒ポンプ・プロ-ブ分光をCdSe単結晶薄膜中の熱い電子系の超高速バンド内緩和に適用した。フォトンエネルギ-1.99eV、パルス幅70fsの励起光を用いて観測されたポンプ・プロ-ブ分光の結果により、0、50fsのスペクトルではポンプ光より低エネルギ-側に非平衡なキャリア分布が観測された。CdSeについて非平衡キャリア分布が観測されたのは最初である。〈CdSe薄膜における励起子共鳴励起下での超高速分光〉CdSeは価電子帯のA、Bバンド中の正孔と伝導帯の電子からなるA励起子、B励起子があるが、これらを共鳴的に励起したときの励起子系のダイナミクスについて研究した。A励起子を共鳴励起したときのスペクトル変化からA、B異種励起子間の散乱過程が吸収線の衝突広がりとして観測された。また、B励起子共鳴励起のとき、A励起子の吸収飽和の回復より極めて速いB励起子の吸収飽和の回復が観測された。これはB励起子がLOフォノンを放出して、A励起子状態へ次々と散乱して行くためであると考えられる。〈BiI_3における超高速コヒ-レント現象の観測〉層状結晶BiI_3の間接吸収端近傍には、積層欠陥による励起子吸収線、R、S、Tが見られる。これらの吸収線の超高速時間応答を強励起条件下において、60fsのポンプ・プロ-ブ法によって調べた。積層欠陥励起子R、S、T線および透明域(630nm)についての温度10Kにおける吸収の時間変化に周期およそ300fsの振動が観測されたが、この振動は数十psにもわたって続く。この振動の周期300fsは、14meVのエネルギ-に対応するが、これはBiI_3のTOモ-ドのフォノンエネルギ-に一致する。従って、この振動現象はコヒ-レントフォノン効果だと考えられる。
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