研究課題/領域番号 |
02044024
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大川 治夫 筑波大学, 臨床医学系, 教授 (30009667)
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研究分担者 |
堀 哲夫 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (80173615)
PUTTE Scfoon ユトレヒト大学, 医学部(オランダ王国), 助教授
松本 正智 筑波大学, 臨床医学系, 助手 (00229569)
VAN DER PUTTE SCJ Associate Professor, DEPT. of MED., Utrecht University
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研究期間 (年度) |
1990 – 1991
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キーワード | 直腸肛門奇形 / 鎖肛 / 鎖肛ブタ / cloaca(総排泄腟) / cloacal plate / 内肛門括約筋 / 尿道 / 三次元立体構築 |
研究概要 |
直腸肛門奇形(鎖肛)は新生児外科疾患の内、最も頻度の高い疾患である。現在まで様々な術式が工夫されて来たが、術後の直腸肛門の機能的予後は特に高位例では、未だに決して満足すべきものではない。これを解決するための1方策として、この複雑な奇形の諸病型の概念を発生学的に検討する目的でこの研究を始めた。 我々はすでにブタ鎖肛の2家系の確立に成功しているので、ブタ鎖肛を大量に生産できる事より、25〜60日令の鎖肛胎仔を得ることも可能であった。胎仔標本を系統的に連続切片として利用して来たが、なお不足の部分が多く困っていた。ユトレヒト大学では、自然発生系の鎖肛ブタ胎仔をリンパ管系の研究の際に偶然得ており、それらの標本も過去に多数得ていた。両者の標本を持ち寄り、多数の発生学的に問題を解決しようという目的でこの共同研究が始められた。 1)鎖肛2家系の維持を続けて来た。その内の1家系に先天性横隔膜ヘルニアが多発しているので、これを維持する作業も加わっている。家系内交配が続いたため、ブタ家系の劣化の傾向が見られたので、他家系より新しい鎖肛ブタを得る努力をした。しかし実際には、他の家系からの鎖肛ブタの導入は少なかった。 2)計画的な交配に続き人工流産を加えて、鎖肛ブタ胎仔を得て、連続胎仔標本作製を続けている。25〜60日令の胎仔は得られたが、20日令以前の流産は胎仔のサイズの問題より、不可能であるという結論に達した。 3)鎖肛ブタ胎仔標本より鎖肛の初期発生の起序を解明するべく、系統的検索を続けている。筑波大学及びユトレヒト大学の標本を持ち合わせて補いあったが、特に不足の胎令に関しては筑波大学の我々のファ-ムよりの胎仔を得て標本を作成するように努め目的を達した。 4)とくに三次元立体構築を行うに当たり1,000に及び連続切片が必要である。 5)直腸肛門部の初期発生における直腸肛門と泌尿生殖器の分離の過程を確認した。とくに我々自身で開発を続けている三次元立体構築法を用いて(UNIX workstationを使用)これを明らかに示した。更に鎖肛における分離異常を明確に示した(Mebio9(1)1992)。 6)ここで教科書に示されているcloacal membraneの概念の誤りを指摘し、genital tubercle内のcloacal plateの存在及びその発生学的意義をあきらかに示せた。dorsal cloacaとtail grooveとの間にcloacal plateが欠損する事によって分離異常すなわち鎖肛が生ずるという説明を示した。 7)cloacal plateの役割は確認できたが、その分離における誘導起序に関しては、20日令以前の標本が必要でなお目的を達していない。 8)正常における肛門管および鎖肛における瘻管はdorsal cloacaに期限していることを証明できた。正常の内肛門括約筋は肛門管をカバ-するように後に直腸の内輪筋が肥大して下降する。これと全く同様に異常な瘻管に関しても直腸に内輪筋が下降して取り巻く事を証明した。 9)鎖肛発生における性差を確認できた。20〜30日令で総排泄腔より尿生殖洞および直腸肛門が分離する過程には全く差はない。雄では直腸尿道瘻が保たれたままでこれに続く下部尿道が発達するので、長い陰茎部尿道ができる。雌では子宮管の入口部としてのMuller結節が尿道を作りながら下降するので、直腸よりの瘻孔は腟前庭に至るまで下降し、最終的に直腸(肛門)前庭瘻の病型となる。
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