研究概要 |
1.昨年中国より持ち帰ったLycorisの核型とそのbanding patternを解析した。その結果、L.anhuiensisが2n=16=6M+10T,L.aurea,2n=15=7M+8T,L.cardwelii,2n=27=6M+10T+11A,L.chinensis,2n=16=6M+10T,L.haywardii,2n=22=22A,L.longituba,2n=16=6M+10T,L.rosea,2n=22=22A,L.radiata,2n=22,33=22A,33A,L.straminea,2n=19=3M+5T+11Aであることが確認された。このほか新種あるいは新変種とすべき分類群が少なくとも二つあった。特筆すべきことはその一つ分類群で2〜6個のB染色体をもつ複数の個体が発見されたことであろう。LycorisでこのようなB染色体が報告されたことは今までにない。さらにこのB染色体はT型染色体の動原体に接して存在するCーbanding positiveなchromatin領域から何らかの機構で作り出されていることが判明した。また、DAPIとCMAによる蛍光染色の結果このB染色体のDNAはTーrichであることが示されたが、その進化学的な意味の解明は今後に残された問題である。 2.Parisの18分類群のCーbanding patternsが解析され、それぞれが特異的なbandをもつことが判明した。これらのうちで氷河期の遺存種とみなされているP.japonica(キヌガサソウ)のbanding patternがもつとも複雑でかつ構成的異質染色質の量も最大であった。高縁属のTrilliumのそれと似た点もあるが、両属間の雑種とは言いがたく、独自に進化した種であろう。中国雲南省の独龍江流域において2新種が発見された。Parisの進化は雲南省山岳部を中心とし、日本産種は辺縁で特殊化したものであろう。 3.Lycorisの系統分類を再検討した結果、中国と韓国でL.albifloraと同定されて来たものは、それぞれことなる分類群として取り扱うべきことが明らかとなった。
|