研究概要 |
TOPEX/POSEIDON衛星は1986年よりNASA(米国航空宇宙局)とCNES(フランス宇宙研究センター)が国際協力によって開発を始めたものであり,海面高の変化を±2cmの分解能で測定することを目的とした人工衛星である。この衛星は国際共同利用というミッションをもっており,世界に対してユーザーが公募された。本研究代表者もこの公募に応じて採択された。本研究の補助金は,この国際的なプロジェクトに参加し,研究の実を挙げるためのものである。 前年度までは人工衛星のハード・ソフトにわたって基本的な性格づけのための費やされ,また,データを解析するためのアルゴリズムの開発を行った。このために年2回の国際会議が開催された。本年度は,衛星打ち上げの年であった。TOPEX/POSEIDON衛星は1992年8月10日に,仏領ギアナよりフランスのARIANEロケットによって打ち上げられ,高度1300kmの軌道に乗せられた。この軌道は常に一定の軌道を保つというERM軌道であり,周回周期10日,傾斜角65°である。観測装置は,NASAのレーダーアルチメータと,CNESのレーダーアルチメータ,およびマイクロ波放射計,レーザーリフレクター,GPS測住装置などである。NASAのアルチメーダーは2周波のレーダーをもち,電離屈の屈抄の影響を取り除く能力をもっている。CNESのアルチメータは1周球であるが,地上,世界中に設置した2周波のDORISビーコンネットワークを使って電離屈の問題を解決しようとしている。アルチメータは±2cmの分解能があるとしても,衛星の軌道が悪ければ意味がない。衛星軌道予測のため,東太平洋に1点,地中海に1点の追跡レーザーステーションを設けた。また,DORISシステムも軌道予測のための有効に働いている。現在のところ,TOPEX/POSEIDON衛星の軌道予測の鉛直精度は±10cmとみられる。本研究においても,海上保安庁水路部の協力をえて,西太平洋域のレーザートラッキングデータを使い,極東域での軌道予測の向上を試みつつある。 平成4年10月より,はじめNASAのTOPEXデータ,ついでCNESのPOSEIDONデータ(連報データ,IGDR)が,ほぼ週に一回の割合いで送られてきている。データ量としては膨大なものである。アルチメータデータは,毎秒毎の海面高データ(単位mm),各種補正値よりなる。本研究ではこれらのデータを解続し,軌道誤差の補正を行っている。補正後のデータは1cmから数mmの信頼度があると思われる。本年度3月まではIGDRのみが使用でき,来年度からMERGEDデータGDR(NASAとCNESのデータをつきあわせ統一データとしたもの)が手に入る予定である。末だ予備的なものであるが,本研究により次の結果がえられた。 1)TOPEX/POSEIDON IGDRデータは,軌道誤差を含めると,±13cmの精度をもち,これだけでも,海流や潮汐による海面変動が分かった。このデータにより,黒潮および親潮,黒潮緩流域の研究を行った。 2)現在,日本近海のジオイドは,海上重力データ,GEOS-3,SEASAT-1,GEOSAT-1の3つのアルチメータ衛星のデータをつかい,±5′のメッシュデータとしてコンパイルされている。このジオイドは,±15cmの精度があると評価されている。これの精度をcmまで高めるためにTOPEX/POSEIDONデータとのMERGINGを試みている。最終的なものはまだ完成していない。 3)本研究とは独立に超伝導重力計によるナノガルレベルでの重力変化測定がなされているが,これにより,重力は海面高の変動の影響を受けていることがわかっている。現在,アルチメータによる海面変動データと重力変化との比較を行ない,影響の仕方を研究している。海洋変化の影響をとりのぞくことにより,真の地球ダイナミクスを解明すべくソフトウェアの開発を行った。
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