研究課題
本年度得た主な知見、成果は以下の通りである。1.カタユウレイボヤの卵巣より単離した一次卵母細胞は、十分成長したものでも受精能はない。しかし、海水中で培養すると10数分で卵核胞が崩壊し、自他の区別無く受精可能となる。さらに1ー2時間培養すると他家の精子では完全に受精するが、自家のものでは受精しなくなる。自家不稔性の獲得には濾胞細胞の存在が必須であるが、濾胞細胞は必ずしも卵黄膜に結合している必要はなく、単離した濾胞房胞と共培養しても有効であった。自家不稔性の獲得に対応して、濾胞細胞由来のタンニン酸好染性物質が卵黄膜外表面に沈着し薄層を形成する。この層は受精に際しライシン(次項参照)によって分解される。自家不稔性とライシン、言い換えれば、卵の自家不稔性と精子の先体反応とが密接な関係にあると予想される。2.昨年度、カタユウレイボヤ精子の卵黄膜ライシンがキモトリプシン様プロテア-ゼであることを見出したが、今回その精製に成功し、酵素学的性質を詳しく調べた。その基質は、卵成熟過程で付加されるタンニン酸好染性の卵黄膜最外層であった。3.カタユウレボヤの卵と精子の融合を、未受精卵にロ-ドした核染色性蛍光色素による精子核の染色、および膜電位の変化を指標とし、両者の細胞膜融合にはZn^<2+>依存性の金属プロテア-ゼが関与していることを明らかにした。4.マボヤ精子の卵黄膜結合能と運動能を切り離して測定する方法を確立し、少なくとも精子のαーLーフコシダ-ゼと卵黄膜糖タンパクのNーグリコシド型糖鎖とが、結合に関与していることを確認した。5.昨年度塩基配列を決定したユウレイボヤrDNA(rRNA遺伝子)から作ったプロ-ブを用い、ユウレイボヤ及びかたユウレイボヤの遺伝学的多型と、その分布を調べた。
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