東北アジアにおける文明の源流の考古学的研究

1991 年度 研究成果報告書概要

• 研究課題/領域番号: 02044058
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 共同研究
• 研究機関: 大手前女子大学
• 研究代表者: 秋山 進午 大手前女子大学, 文学部, 教授 (00126484)
• 研究分担者: 蘇 小幸 旅順博物館, 副館長 ; 孫 守道 遼寧省文物考古研究所, 名譽所長 ; 辛 占山 遼寧省文物考古研究所, 所長 ; 郭 大順 遼寧省文化聴, 副聴長 ; 廣川 守 財団法人泉屋博古館, 学芸員 ; 西村 康 奈良国立文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 発掘技術研究室長 (80000488) ; 伊東 太作 奈良国立文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 情報資料室長 (20000482) ; 澄田 正一 愛知学院大学, 文学部, 客員教授 ; 谷 豊信 東京国立博物館, 東洋課, 文部技官 (70171824) ; 大貫 靜夫 東京大学, 文学部, 助手 (70169184) ; 宇野 隆夫 富山大学, 人文学部, 助教授 (70115799) ; 宮本 一夫 愛媛大学, 法文学部, 助教授 (60174207) ; 岡村 秀典 九州大学, 文学部, 助教授 (20183246) ; GUO Da Shun Deputy Director of the Culture Department of Liaoning Province ; SU Xiao Xing Deputy Director of Lushun Museum ; XIN Zhan Shan Director of Liaoning Provincial Cultural Relics and Archaeology Research Institu ; SUN Shou Dao Honorable Director of Liaoning Provincial Cultural Relics and Archaeology Resear
• 研究期間 (年度): 1990 – 1992
• キーワード: 東北アジア / 古代文明 / 考古学的研究 / 紅山文化 / 夏家店下層文化 / 黄河文明 / 新石器時代 / 青銅器時代

研究概要

1、今年度の成果として、昨年度初めて行なった考古測量調査を、2箇所において実施することが出来た。新中国の成立以来、中国では外国人が考古調査を行なうことを頑なに拒んできたが、測量調査とはいえ、昨年に続き、中国の土地のうえで、他に先駆けて、我々が考古学的研究調査を行なうことが出来たことは、大きな成果といって差支えなかろう。
考古測量を行なった一箇所は、遼寧省の西部、阜新市の西南にある化石戈郷下新丘村の南梁遺跡である。昨年の踏査の際に現地を訪れ、きわめて保存状態がよく、また規模も大きい所から、測量調査を計画していたものである。昨年測量調査した城子山と同じく、B.C.19〜18世紀にさかのぼる、夏家店下層文化期の遺跡である。
中国が未開の状態から文明段階に入るのは、黄河流域においてB.C.19世紀である。ところが、それとほぼ同時期の遺物が、ここ遼寧省の夏家店下層文化期にあらわれているのである。この夏家店下層文化は、青銅製の器物をもち、周囲に城壁をめぐらした都市を各地に築いていることが、近年明らかになりつつある。共同研究のテ-マとした“文明の源流"の一つが、ここにあらわれているといえよう。遺跡は南梁の屋根上にあり、台状に高まって石垣ははるか彼方から遠望でき、ここでも城子山の別名がある。実測の結果、城跡は東西170m、南北190mほどの方形で、周囲に石垣を回らしている。中原地方に多く見られる、都市国家というべき、城壁を回らせた都市が、どのような理由でこの遼西地域にも多数存在するかは、日中双方にとっての興味有る研究課題である。それらの研究成果は、共同研究終了後の報告書に発表することとしたい。
測量調査を行なったもう一箇所は、遼東半島の先端に近い、大連市金州区後石灰窯村王山頭の積石塚遺跡である。もとは海岸に近い島であったとおもわれるが、南北500m、東西300m、高さ43mの繭形の岡の稜線上に、少なくとも14基の積石塚が築かれている。今回の測量調査によって、積石塚の構造や築成の様相を詳しく検討することができた。軍事機密のため調査不可能となった四平山遺跡と、相似た内容の遺跡である王山頭遺跡の今回の調査によって、当初の研究計画に近付けることが出来たのは誠に幸いである。
2、今回も遺物の実測調査を行なう事が出来た。考古測量と併せて、目的を持った実測図を作成することが出来た。遺跡調査は今回は遼寧東部に重点をおいた。この地域は、遼西とはまた異なり、とりわけ、朝鮮半島や、わが国の“文明の起源"を研究するうえで重要な地域である。そうした遺跡と遺物を数多く見ることができ、研究を深めるうえで成果があった。それらもいずれ、研究終了時の報告書に発表することとしたい。
3、国際共同研究の趣旨に従い、中国人研究者を3名招聘し、九州、関西、関東の考古遺跡や博物館を訪れた。今回来日の研究者3名は熱心に各地での見学の臨み、日本考古学の実状の把握に努められた。そして、わが国と遼寧省との考古学的な関係がきわめて深い事への認識を新たにされた。また、わが国の考古学者の東北アジアへの関心の高さも実感された。関心は遺跡・遺物のみならず、それらの保存・展示・活用にまでおよび、大きな刺激を受けて帰国されたことは、国際共同研究の重要な成果といえよう。
4、中国遼寧省の研究者を迎え、各地で研究者同志の真剣な共同研究会を開催したが、それにとどまらず、九州大学および大阪市文化財協会において、遼寧省における最新の研究成果を講演会の形で発表してもらった。このことは、今回の国際共同研究を一部の研究者のみが享受するのでなく、広く一般人に迄、研究の門戸を開放したものである。

研究成果

• [文献書誌] 秋山 進午: "中国文明の源流をもとめて・2" 大手前女子大学論集. 26. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 郭 大順,岡村 秀典訳: "遼寧先史考古学と遼河文明の探索" 九州考古学. 66号. 59-70 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 許 玉林,岡村 秀典訳: "遼東半島石棚と大石蓋墓概論" 九州考古学. 66号. 71-80 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 岡村 秀典: "馬具の源流慕容鮮卑族に" 朝日新聞(文化欄). 3月24日. (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 宮本 一夫: "遼東半島周代併行土器の変遷ー上馬石貝塚A・BII区を中心にー" 考古学雑誌. 76ー4. 60-86 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 宮本 一夫: "戦国時代燕国副葬陶器考" 愛媛大学人文学会創立十五周年記念論集. 178-195 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Shingo AKIYAMA: "Some problems on the Xiajiadian-xiaceng civilization." Journal of Chinese Archaeological Society of Japan.1. 1-6 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Singo AKIYAMA: "Seeking to the problem on origin of Chinese civilization." Articles of Otemae college.26.
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] GUO Da Shun, Translated by Hidenori OKAMURA: "The Prehistoric Archaeology of Liaoning and Research into the Liao He Civilization" Kyushu Kokogaku.66. 59-70 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] XU Yu Lin, Translated by Hidenori OKAMURA: "An Outline of Dolmens in the Liaodong Peninsula" Kyushu Kokogaku. 66. 71-80 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Kazuo MIYAMOTO: "The Transitions of Zhou Period Pottery in Liaodong Peninsula" Koukogaku Zassi, or Journal of the Archaeological Society. 76-4. 60-86 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Kazuo MIYAMOTO: "A Study of the Pottery buried in a Tomb at Yen in the Period of Warning States" 178-195 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Kazuo MIYAMOTO: "A Study of the Pottery buried in a Tomb at Yen in the Period of Warning States" 178-195 (1991)Collected Essays in Commemoration of the 15th Anniversary of the Society of Letters and Human Sciences Ehime Univ.
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より