研究概要 |
テトラピラジノボルフィラジン(Pz)はフタロシアニン(Pc),ポルフィリンなどと同様大環状供役化合物の一種である。しかし構造の酷似したPcにくらべ研究例は大変少ない。周辺に側鎖を付与したPz液体晶化物において中心金属や、周辺置換基による液晶性などに対する効果の研究例はほとんどなされていない。今年度は昨年度に引続き、様々なディスコティック液晶性Pz誘導体を合成し、それらの化合物が示す物性を測定した。先ず、πーアクセプタ-性の良好なPz誘導体を得る為に、ビラジン環の窒素原子内に酸素原子が配位したPz誘導体1aの合成を試みた(図1)。その結果、酸素原子の2つ配位した化合物1bを得た。この化合物はrecutangular disordered columnar(D_<rd>)液晶相を有し、酸素原子の配位してない化合物よりもπーアクセプタ-性の向上していることを見いだした。 次に、長鎖置換Pz誘導体の形成するカラムナ-液晶相に対する立体障害のもたらす影響を調べることを目的として、nーdodecylphenyl基あるいは、nーdi(dodecyl)phenil基をPz環に導入した金属錯体(Fig2.;中心金属:(Cu,Ni)を合成した。その結果、全ての誘導体2Cuおよび2Ni,3Cu,3Niは、それぞれ2種類のディスコティックカラムナ-液晶相を示すことを見いだした。誘導体2Cuと2Niは室温でD_<tet.d>相を示すが一方3Cuと3Niは室温でD_h相を示すことを明らかにした。さらに、3Niは室温でD_<hd>相を示すが3Cuは室温でD_<ho>相を示すことも見いだした。このように化合物2と3は置換基と中心金属をわずかに変えただけで液晶構造が敏感に変化することを発見した。
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