研究分担者 |
RICHARD MALK カリフォルニア大学, 教授
RUSSELL JONE カリフォルニア大学, 教授
TERRY CHAPIN カリフォルニア大学, 教授
WILHELM GRUI カリフォルニア大学, 教授
BOB B. BUCHA カリフォルニア大学, 教授
渡辺 昭 名古屋大学, 農学部, 教授 (70023471)
高倍 鉄子 名古屋大学, 農学部, 助教授 (60089852)
杉浦 昌弘 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 教授 (80027044)
BOB Buchanan Department of Plant Biology, University of California, Berkeley
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研究概要 |
名古屋大学-カリフォルニア大学バークレー校間の植物生化学と分子生物学に関する共同研究プログラムの第3年次(最終年度)の研究実績の概要は以下のとうりである。 名古屋大学側からは杉山達夫がバークレーにおもむき(1992年11月),B.Buchanan,W.Gruissem,R.Fisher,T.Chapin教授らと研究討論を行うとともに,植物生物学科において窒素によるC4光合成遺伝子の発現制御に関するセミナーを行った。この研究に関連し,C4光合成遺伝子の発現がグルタミンをインデューサーとし窒素の供給に応答し,選択的に制御されるという発見が注目を集めた。この新しい概念は特にBuchanan教授とChapin教授の関心が深く,Buchanan教授には持参したトウモロコシ葉の2種の光合成細胞のプロトプラスト標品を手渡し,同教授が研究の主目標としている光合 成タンパク質チオレドキシンのイソプロテインのC4光合成細胞におけるオルガネラならびに細胞間局在性の解明を依頼した。期待されるこの成果をもとにしてこのタンパク質の環境要因,とりわけ窒素と光に対する遺伝子発現の解明を今後共同で研究する了解を得た。Chapin教授とはアラスカなど極寒の環境下での温度ストレスにおける窒素配分のしくみを共同で研究することになった。さらに,杉山はこれら両教授と親交が深く,環境要因による光合成遺伝子発現調節の研究に造詣深いノースカロライナ州立大学S.Huber教授を訪問し,名古屋大学/カリフォルニア大学バクレー校/ノースカロライナ州立大学間にまたがる光合成遺伝子発現の環境への応答に関連する共同研究実施にむけて研究討議をした。S.Huber教授も賛意を表し,今後窒素同化と炭素同化系の遺伝子発現に関わる代謝間の相互関係に焦点をあて共同研究を近い将来実施すべく努力することになった。また,今年度日本側から高倍鉄子がバクレー校におもむきL.PackerとR.Malkin両教授とラン藻の浸透圧調節に関わるベタイン合成経路の中間体のNMRによる検出を目的に共同研究を実施する予定であったが,急務による双方の時間の調整がつかず,当初の計画を変更した。代って,名古屋大学側からは武田穣がバークレーにおもむき,W.Gruissem教授と葉緑体の複製機構について共同研究を行った(1993年3月)。これら両研究者は葉緑体における複製に関わる要因について今後共同研究を継続して行うことになった。 カリフォルニア大学バクレー校側からはBuchananとGruissem教授が名古屋におもむき(1992年8-9月),杉山と杉浦昌弘ら名古屋大学の植物科学研究者と研究討議を行った。Buchanan教授はチオレドキシンの光合成における役割とこのタンパク質の食品科学や医学領域への応用面についてセミナーを行った。同教授の光合成炭素固定系酵素の光による活性調節の鍵となるシオレドキシンの研究からスタートし,このタンパク質が種子タンパク質の重合をもたらすことによる製パンや製麺技術への応用とこのタンパク質による蛇毒などの解毒作用は,光合成とは異なる新しい領域へのバイオテクノロジーへの展開であるとして日本側研究者に感銘を与えた。また,Buchanan教授は杉山の研究室でトウモロコシ葉からプロトプラストを調製し,懸案の共同研究であるトウモロコシ光合成細胞におけるチオレドキシンアイソプロテインのうちf型の発現にかかわる予備実験を実施した。Gruissem教授は杉浦との間で,葉緑体における遺伝子発現,とりわけmRNAの安定化に関与するタンパク質について今後情報を交換することになった。また,Gruissem教授は名古屋滞在中に第9回国際光合成会議にも出席し,ポスターセッション″光合成研究における遺伝学的アプローチ″を主催し,同教授は葉緑体における二次代謝系の遺伝子発現系における巧妙な遺伝学的解析手法を発表し,名古屋大学研究者のみならず参加者の注目を集めた。
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