研究課題
5月にはアメリカ側研究分担者Kaneshiroが来日し、西表島において日本側研究分担者久場らとともに沖縄産ウリミバエの配偶行動の野外調査を行った。沖縄のウリミバエは雄が夕刻集団求愛場(lek)に飛来し、縄張りを形成してそこへ来る雌と交尾する。従って雄はあまり動かず、雌が良い配偶相手を求めて動きまわる。これはハワイのウリミバエでは雌が葉にとまっており雄が動きまわるのと異なる。しかし沖縄のウリミバエでも密度が低いときは雄が動きまわることが発見され、両者の違いは一部は密度条件に、一部は遺伝的な違いによることが示唆された。9月には日本側研究分担者上宮が、彼の製作した音響測定装置を持ってハワイを訪れ、Kaneshiroとともにハワイ産ウリミバエの雄の交尾信号音を記録、解析した。その結果を上宮が以前にしらべた奄美大島産ウリミバエの交尾信号音と比較したところ、雌探索音、雌誘引音、雌固定音、マウント音、交尾後音という音連鎖は共通であったが、パルス休止時間はハワイ産が奄美大島のものより有意に長かった。また音響特性の多変量解析によってハワイ産ウリミバエは奄美産とは90%正しく判別できた。さらに伊藤は数回沖縄におもむき久場らとともに沖縄産ウリミバエの精子競争の実験的研究を行い、雄が交尾のさい雌の再交尾を抑制する物質を注入するらしいこと、それは精子ではなく、精液中に含まれているらしいこと、ウリミバエの精子寿命が他の昆虫に対して短いことなどを明らかにした。以上の結果はハワイと南西諸島のウリミバエが同種か否かという大問題を提起する。この点を深く解明するため、第2年度はKaneshiroの訪日による野外調査と久場の訪米によるハワイのハエの形態・行動の調査を実施する予定である。
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