研究課題
国際学術研究
1991年、共同研究者の乾 健二がハノ-バ-医科大学より帰国し、大学院生の高橋豊が共同研究に出発した。両名により、豚肺移植の気管支吻合部治癒機転が、我々の開発したLDV(Laser Doppler Velocimetry)法を用いて、検討され、プロスタグランデインI2が有効であることが明らかになり、臨床的に使用されている。実験は豚左肺移植を行った後、ステロイドとプロスタグランデインを用い、LDV法にて吻合部粘膜血流を測定した。無処置群に比較し、有意に良好な粘膜血流状態を示した。今年は大学院生の福瀬達郎が滞在研究する予定である。彼は我々が日本で検討しJ Thorac Cardiovas Surg(JTCS)に掲載予定の、FK506の免疫抑制につきLDV法で検討する予定である。日本で開発されたFK506は最新の免疫抑制剤であるが、腎、肝障害も認められる。CyAと併用してお互いの副作用の軽減が可能であると予想される。トロントには1990年、平井 隆が出発し、現在犬肺移植においてFK506の大量投与による免疫寛容(トレランス)の検討を行なっている。通常量に10倍のFK506を使用することにより、約1ヵ月以上免疫抑制を行わなかった犬でも拒絶反応は生じなかった。今年は平田敏樹が交代し、免疫寛容のメカニズムについて検討を行う。1991年には長谷川誠記がセントルイスに留学し、現在抗23CD抗体で血管内皮細胞の再灌流障害防止につき、ラットモデルで実験を行っている。ラットモデルはきわめて不安定な系で現在安定した系を得るため鋭意努力をしている。当教室でのFK506の有効性の結果については、J Thorac Cardiovas Surgで、出版される予定である。FK506は単独使用でCyAに優るとも劣らない免疫抑制効果を示した。さらにFK506とCyAの併用効果を犬肺移植で行い、おのおのの単独使用に比較し、きわめて良好な免疫抑制効果を示した。その結果をJ Thorac Cardiovas Surgに投稿し、受理され、出版待ちである。また、ヒトサイオレドキシンがラデイカルスカベンジャ-作用を有することが、論理的、in vitroの実験で明らかになったので、in vivoの系でその効果を検討した。肺組織障害をきたすラットの系を用いて、検討し、ヒトサイオレドキシンが有効で安全なラデイカルスカベンジャ-であることを見いだし、報告を予定している。今年は、より大型動物で実験する予定である。次の系で有効性が明らかになれば、臨床使用が可能かどうか、検討できる段階になるが、その可能性はきわめて高いと考えている。国際学会発表は1991年8月ピッツバ-グで第1回FK506会議があり、和田洋巳、横見瀬裕保、長谷川誠紀の3名が発表した。ピッツバ-グのDrスタ-ツルが肺におけるFK506の効果を、早急に臨床肺移植で検討したいと、コメントが述べていた。この3報告の結果はTransplant Procedに掲載された。10月台北で第2回アジア移植学会でやはり、FK506の有効性を和田洋巳、福瀬達郎が発表し、現在Transplant Procedの出版準備中である。1992年2月中旬にはカナダ、トロント大学から大学院生のトム ワッデルが3週間滞在し、当教室の研究テ-マを共同研究させ、今後のトロントとの交流の基礎を確立させた。1992年3月にはCarolyn M Doresler助教授がセントルイスから訪問し、現在のセントルイスでの移植の問題点を講演した。当教室で講演会を1992年3月24日に行ったが、臨床肺移植手術は、現在ではきわめて安定した手技であり、常に待機患者は50人以上で、問題はドナ-不足のため、手術できないまま,死亡する患者が増えていることであると述べていた。
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