研究分担者 |
ライスタット D. ウプサラ大学, スベドベリー研究所, 教授
クランダー F. ウプサラ大学, 放射線科学部, 助手
カレン H. ウプサラ大学, 放射線科学部, 助教授
グスタフソン L. ウプサラ大学, 放射線科学部, 助教授
ホイスタッド B. ウプサラ大学, 放射線科学部, 教授
ヨハンソン A. ウプサラ大学, スベドベリー研究所, 教授
クランダー S. ウプサラ大学, 放射線科学部, 教授
畑中 吉治 大阪大学, 核物理研究センター, 助教授 (50144530)
水野 義之 大阪大学, 核物理研究センター, 助教授 (30229710)
安東 愛之輔 大阪大学, 核物理研究センター, 助教授 (80044783)
NILSSON L. Faculty of Science, Uppsala Univ., Professor
JOHANSSON A. Svedberg Laboratory, Uppsala Univ., Professor
ANDO A. Res. Ctr. for Nucl. Phys. Osaka Univ., Ass. Professor
MIZUNO Y. Res. Ctr. for Nucl. Phys. Osaka Univ., Ass. Professor
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研究概要 |
SSC、LHCのような超大型衝突器をはじめとした各種の粒子ビ-ム衝突器や、放射光リングあるいは超高分解能電子顕微鏡の高輝度化には、ビ-ム粒子の速度(速さと方向)の一様化が最重要の問題となる。全粒子が完全に等速度の理想ビ-ムでは、個々の粒子は相対的に静止しており、原理的には絶対温度零度に冷却したビ-ムとなっている。 粒子ビ-ム高輝度化の「確率冷却法」の開発で、1984年にはCERN(欧州原子核研究機構)のS.バンデルメ-ル博士がノ-ベル賞を受賞した。しかし、この方法では1秒以上の長い冷却時間を必要とし、粒子ビ-ムを断続的にしか冷却出来ないため、より強力な冷却法が待望されていた。 一昨年、池上(大阪大学教授、核物理研究センタ-長)によって新原理「サイクロトロン・メ-ザ-冷却法」(略称CMC)が、米国物理学会誌Physical Review Letters64巻、1737頁、2563頁(1990)で公表された。新原理CMC電子ビ-ムやイオンビ-ムの運動エネルギ-の非一様部分を、サイクロトロン・メ-ザ-の形で強制放射して冷却するもので、実現すれば「確率冷却法」などに比べて100万倍以上強力である。第1図は同論文で新原理説明に使用された粒子ビ-ム冷却蓄積リングの概念図である。CMC装置(図中L,L,C)で粒子ビ-ムの輝度を向上させながら、粒子ビ-ムを長時間蓄積することが出来る。 この論文公表前後から波紋の輪は大きく拡がり、C.ルビアCERN所長、バンデルメ-ル博士やA.ブロムリ-米大統領科学補佐官等をはじめ多数の人々から意見が寄せられている。マックス・プランク研究所(ドイツ)などからの共同開発の申し入れもあった。しかしながら、これらの動きに共通した点は、新原理の検証には大規模で長期にわたる研究開発が必要であろうという思惑であった。 意外なことに、新原理CMCは普遍性が高いがゆえに、かえって実験台に乗るほどの小型装置でも、検証が可能なのである。第2図は核物理研究センタ-で製作したCMCの試験装置で、本体の全長は2メ-トルにも満たない小型である。このたびウプサラ大学(スウェ-デン)との共同研究で、この試験装置によって新原理の予言する10ナノ秒(1億分の1秒)以下の瞬間冷却が実験的に確認された。第3図は異なる横ぶれエネルギ-の電子ビ-ムが、CMC試験装置内で同一エネルギ-に移行する傾向を示している。この結果、新原理CMC実用のための特段の開発は不要であることも判明した。 SSCやLHCなどの超大型粒子ビ-ム衝突器や、大型放射光リングをはじめとした、次世代の高輝度粒子ビ-ム装置の計画は、新原理CMC抜きの検討では充分とは言い難い。新原理CMCの活用が大型装置の高性能化のみならず、その構成機器の合理化あるいは小型化に伴う地球規模の省資源につながるからである。また4年前、池上が提案した「自由ポジトロニュ-ム放射光」(米国物理学会誌Physical Review Letters 60巻929項(1988)で公表)も新原理CMCによって、実現への道が大きく開けた。(図は添附資料参照)
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