研究概要 |
キイロショウジョウバエのアミラ-ゼ遺伝子は2つの重複遺伝子からなる非常に多型的遺伝子座であるが、これまでは私達はAmy^<1ー1>,Amy^<1ー6>,Amy^<3ー6>,Amy^<1ー3>というアイソザイム系統の塩基配列を決定した。本年度はAmy^<1ー2>系統と、キイロショウジョウバエの近縁種D.erecta,D.teissieriの塩基配列を決定した。アイソザイム内,および異なるアイソザイム間の比較より上記のアイソザイムは歴史が非常に古く、キイロショウジョウバエの近縁種の分化が起った頃から存在するのではないかと思われる証拠を発見した。また同時に、アイソザイム間には強い連鎖不平衡が存在することも明らとなった。種間,種内および重複遺伝子座間との比較より,種内での2つの遺伝子座が同じ方向に進化するという共調進化が働いているという強い証拠も得ることが出来た。この共調進化の形成の機構に関してはPennStateのHedrick博士との共同研究を進めているところである。アミラ-ゼ調節領域,特に5上流における働きに関してはアリゾナ州立大学のDaane博士らと共同で,P因子を使った形質転換個体を作り,そのアミラ-ゼ活性を測定することにより研究を行った。また,形質転換実験と平行して,ケ-ジを使った自然選択実験も行い,5上流のどの部位が自然選択に関与しているか明らかになりつつある。また,アミラ-ゼではトランスアクティングな誘発能の違いが個体の適応度に大きな影響をおよぼすことが私達の過去の研究より明らかになっているが,本年度の研究で,その誘発能に関する遺伝子がX染色体上にあることが明らかとなった。その遺伝子のクロ-ニングを行い,塩基配列を最近決定したところである。形質転換法を用いてその働きを調べた結果,その遺伝子は確かに誘発能に関与していることが明らかとなった。現在その確認実験を行っているところである。
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