不定型多剤耐性変異株の分離と解析

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02044119
• 研究機関: 鹿児島大学
• 研究代表者: 秋山 伸一 鹿児島大学, 医学部, 教授 (60117413)
• 研究分担者: PASTAN Ira H 国立癌研究所, 分子生物部門(米国), 部長 ; GODDESMAN Mi 国立癌研究所, 細胞生物部門(米国), 部長 ; 住澤 知之 鹿児島大学, 医学部, 助手 (90206582) ; 古川 龍彦 鹿児島大学, 医学部, 助手 (40219100)
• キーワード: 不定型多剤耐性 / シスプラチン耐性 / 多剤耐性克服 / PAKー200

研究概要

1.不定型多在耐性変異株について.
我々はヒト癌KB細胞から、多剤耐性克服活性を有する植物アルカロイド、セファランチンの存在下にアドリアマイシン耐性株を分離した。これらの耐性株では、抗癌剤排出ポンプと考えられているPー糖蛋白質の発現は認められなかったが、アドリアマイシンの細胞内蓄積は減少していた。現在、復帰変異株の分離と、膜蛋白質の解析を行っている。
2.シスプラチン耐性株について。
KB細胞由来のシスプラチン耐性株では、細胞内へのシスプラチンの蓄積が減少していた。KB細胞由来のシスプラチン耐性株からの復帰変異株の分離が困難だったので、ヒト前立腺癌PCー3細胞由来のシスプラチン耐性株、PCー5とその完全復帰変異株PCー5Rについても同時に解析を行った。PCー5でも細胞内シスプラチンの蓄積が減少しており、細胞膜の蛋白質について解析を行ったところ、PCー3で発現がみられないがPCー5で発現している蛋白質が数種類認められた。そのうちPCー5Rで再び消失する蛋白質2種を同定し、それらの抗血清を作製中である。
3.In vivoで多剤耐性を克服する薬剤について。
我々は、ヒト癌KB細胞、KB細胞由来多剤耐性KBー8ー5細胞をヌ-ドマウス背部皮下に移植し、In vivoでの多剤耐性克服活性を測定する系を確立した。また米国国立癌研究所のゴッテスマン、パスタン両博士は、骨髄細胞でMDR1mRNAの発現しているトランスジェニックマウスを作り、これがIn vivoでの多剤耐性克服活性物質のスクリ-ニングに用いることができることを示した。我々の開発したジヒドロピリジン誘導体、PAKー200は両実験系でIn vivoでの耐性克服作用が強いことが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] Misako Ichikawa: "Interaction of organic chemicals with P-glycoprotein in the adrenal gland,kidney and a multidrug-resistant KB cell." Journal of Biological Chemistry. 266. 903-908 (1991)
• [文献書誌] Misako Ichikawa: "Glycosylation of P-glycoprotein in a multidrug-resistant KB cell line,and in the human tissues." Biochimica Biophysica Acta. 1073. 309-315 (1991)
• [文献書誌] Hiroshi Kikuchi: "Verapamil potentiates the effect of Adriamycin and vincristine on human renal adenocarcinoma cells." Medical Journal of Kagoshima University. 43. 27-39 (1991)
• [文献書誌] Tatsuhiko Furukawa: "Human thymidine phosphorylase and platelet derived endotherial cell growth factor have identical sequences." Nature. (1992)
• [文献書誌] Kiyoshi Niwa: "The effect of a dihydrophridine analogue,PAK-200,on revesing in vivo resistance of tumor cells to Adriamycin." Cancer Research. (1992)
• [文献書誌] 秋山 伸一: "抗癌剤のはたらきー課題と展望ー" 共立出版株式会社, 0-130 (1991)
• [文献書誌] Shin-ichi Akiyama: "A molocular basis for multidrug-resistance and reversal fo the resistance;In Biological Aspects of Brain Tumors" Springer-Verlag, 63-72 (1991)
• [文献書誌] Shin-ichi Akiyama: "The expression of P-glycoprotein in human tumors and mechanisms to overcome multidrug resistance;In Cytoprotection & Cytobiology,9" Excerpta Medica Ltd., (1991)