セロトニン作働性ニュ-ロン集網の生理学的意義ーその系統進化的解析ー

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02044122
• 研究機関: 東京都立大学
• 研究代表者: 桑沢 清明 東京都立大学, 理学部, 教授 (10015589)
• 研究分担者: 黒川 信 東京都立大学, 理学部, 助手 (50211222) ; 矢沢 徹 東京都立大学, 理学部, 助手 (30106603) ; 鶴原 喬 東京学芸大学, 教授 (40100086)
• キーワード: 軟体動物後鰓類 / 甲殻十脚類 / 心臓 / 血管系 / 心臓調節神経 / 甲殻等脚類 / セロトニン / 免疫細胞化学

研究概要

今年度の研究計画に従い日本側では研究分担者のみで実施されアメリカ側では研究代表者が渡米し、研究協力者Dr.R.B.Hillと共同研究を行った。その概要は以下の通りである。
1.軟体動物後鰓類ウミフクロウとアメフラシ及び甲殻十脚類オニヤドカリと等脚類オオグソクムシの心臓、血管系、中枢及び末梢神経系を材料として、セロトニン作動性神経の分布とセロトニンそのものの機能を調べた。セロトニン作動性の分布は抗セロトニン、ウサギ抗血清を、全載及びパラフィン切片標本に適用し、免疫反応を調べた。(1)後鰓類では心臓全域と動脈に免疫陽性神経プロセスが存在することを明らかにした。中枢神経系では脳、足、側神経節内に陽性ニュ-ロンが存在した。内臓神経節ではアメフラシでは多数認められたが、ウミフクロウではニュ-ロン細胞体そのものの陽性反応は見られなかった。口球神経節では脳及び末梢由来の陽性軸索が多数認められたが、何れの標本にも陽性細胞は存在しないことを明らかにした。(2)甲殻類では両種ともセロトニン役与により心臓活動に促進効果が強く現れたが、心臓及び動脈に免疫陽性プロセスは存在しない事が判った。しかし十脚類で囲心腔器官に免疫陽性プロセス及び細胞が発見され、セロトニンは心臓促進ホルモンとして機能することが推定された。
2.桑沢がアメリカロ-ドアイランド州立大学Dr.R.B.Hillの研究室で二枚貝Mercenaria mercenariaを用い、心臓、心臓調節神経、内臓神経節中にセロトニン免疫陽性細胞及びそのプロセスが存在することを発現した。セロトニンは心臓促進神経伝達物質であることを心筋細胞から興奮性接合部電位を記録し薬理学的研究により証明した。本成果を踏まえて、Dr.Hillを来年度日本に招へいし、頭足類心臓循環系で研究を進める予定でいる。

研究成果

• [文献書誌] R.B.Hill: "Neuromuscular transmission in molluscan hearts." Zoological Science. 7. 999-1011 (1990)
• [文献書誌] K.Tanaka: "Identification of cardioーacceleratory meurons in the thoracic nerves in an isopod,Bathynomus doederleini." Brain Research. (1991)
• [文献書誌] K.Tanaka: "Central output for extrinsic neural control of the heart in an isopod crustacean,Bathynomus doederleini:neuroanatomy and electrophysiology." Comparative Biochemistry and Physiology. (1991)
• [文献書誌] K.Tanaka: "Identification of cardioーinhibitory neurons in the thoracic ganglion of the isopod crustacean Bathynomus doederleini." Brain Research.
• [文献書誌] T.Yazawa: "Frontiers in Crustacean Neurobiology.Cholinergic,catecholaminergic and GABAergic mechanisms of synaptic transmission in the heart of the hermit crab." Birkhauser Verlag,Berlin. Ed. by K. Wiese et al., 401-406 (1990)
• [文献書誌] K.Tanaka: "Frontiers in Crustacean Neurobiology.Bradycardia and tachycardia induced by extrinsic cardiac nerves in an isopod,Bathynomus doederleini." Birkhauser Verlag,Berlin.Ed.by K.Wiese et al., 492-497 (1990)