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1991 年度 研究成果報告書概要

在来技術の現代性、移転可能性ー日本・インド・シリヤの国際比較ー

研究課題

研究課題/領域番号 02044132
研究種目

国際学術研究

配分区分補助金
応募区分共同研究
研究機関大東文化大学

研究代表者

林 武  大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (50189651)

研究分担者 BAJAJ  マドラス州政策科学研究所(インド), 所長
ABRASH A  シリヤ国防省, 顧問
宮川 朝一  建設省, 土木研究所・システム課, 課長
飯塚 キヨ  ユネスコ東アジア文化センター, 専門委員
田中 哲哉  九州大学, 文学部(宗教学), 助手
斉藤 美津子  大東文化大学, 国際関係学部, 講師(非常勤)
中堂 幸政  大東文化大学, 国際関係学部, 助教授 (60188498)
J. K. Bajaj  Chairman, Centre for Policy Science, Madras. India
ADNAN Al-Abrash  former President, The Damascus Museum of Arms. Syria.
DR IIZUKA Kiyo  Consultant, UNESCO East Asian Centre
MIYAKAWA Asaichi  Counselor, Institute of Civil Engineering, Ministory of Construction
研究期間 (年度) 1990 – 1991
キーワード伝統技術(の近代性) / ダマスカス鋼(UHC鋼) / (インドの)ウ-ツ鋼 / 副原料(燃料)問題 / (インド)竹の炭 / フィ-ルド・ワ-ク / (技術の)ル-ツ / 残有技術(イラン・インド・パキスタン)
研究概要

伝統技術の近代性。 このことについては、現場の技術者たちがよく心得ている。社会科学系の学者がむしろ過少評価におちいりがちである。たとえば、ダマスカス鋼の刀剣は19世紀いらい西ヨ-ロッパの学者(金属学・物理・化学)たちが熱心に研究してきているが、今日ではアメリカがその中心になっている。それは、非常に大きな高度市場が見込れている、UHC鋼の先例としてである。いわば、伝統技術には現代の最尖端技術にも及ばない高水準の成果があることの証明である。
化学分析の結果、いま改めて「ダマス鋼」とは何か、という定義問題が浮上してきた。金属学者たちは、鉄と鋼の合金がダマス鋼であることを認めるものの、その合金の製造法が「るつぼ」法によるものでなければならないとする学説がある。その立論からすれば日本刀は、ダマス鋼と同じ文樸を刀身にみせるものの、「るつぼ」法でないから、「純」ダマス鋼には入れない。
しかし、日本刀の鍛治がいも日本でもダマス鋼を在来の方法で打ち出している。分析的にはダマス鋼と同じ組織であるようだ。
このことは、ダマス鋼が、スペイン(トレドが中心)に移植されたあと、西ヨ-ロッパ(ドイツ)に、次いでアメリカに転じた過程で、ダマス鋼が固有名詞ではなくなったことに対応している。つまり西に向った系統と東に向った系統とは、独自に展開した技術内容をもちながら、いま改めてUHC鋼を出現させている(日本を含めて)ことになる。(そのことが研究上の混乱を生んでいる)。
だが、現地調査の結果判明したことは、ダマスカスにはすでにダマス鋼を(一貫)生産する技術のシステムは失われている。この土地の風土と資源条件に合った技術が消減したのは、副材料問題と市場問題によると我々は判断した。また。シリヤは最終加工地であって、主要材料は周辺各地から供給されたものとするのが妥当であるとの結論をえた。そのさい、供給源はインド各地およびシラン北部などが主たるものであったと史家は分析するが、さらにはトルコやロシヤ南部からも供給されていたものであろう。この点にかんする研究者は、信頼できる実績をあげているものには、英国にしかいない。我々の国際共同研究は、のちに述べるようにシリヤとインドの学者と協力するだけでは満足のゆくものにならないかも知れない。そういう予想をもたせる事情に、日・印・シの三国の事情はあるとしてよい。我々は、実態調査を第一課題とはするものの、既有研究はフルに利用するつもりだし、そうしてきた。將来も同じである。
ダマスカス鋼はUHC鋼として現代技術が及ばない逸品を残している。UHC鋼を復活することが可能か、復活の負担と利益に関心をむけて調査したが、アラブ人学者の見解と違った結論に到達したのは、我々が「るつぼ製鋼」法の副原料問題(二木炭)に注目していたからである。ダマス鋼はシリヤで一貫生産されたのではなく、同地が最終加工地だった。また、原料としての粗鋼はインドのウ-ツなどを中心に「イスラ-ム各地」から持ち込まれていた。これで中東(レバノンとシリヤ)の植生問題にまつわる燃料供給(不足)の謎はとけることになる。 しかしウ-ツ鋼については、詳細が分っていない。インド固有の文化事情から、ヨ-ロッパ文献(とくにインド省文著)に依有する他ないのだが、近年、偶然のことから残有するウ-ツ製法(二技術)が確かめられた。その結果、注目すべきことは、この「るつぼ」法では竹の炭が使われていたことが判明した。この技術を活用すれば、近代製鉄に不向きとされてきた中・南部インドの鉄鉱石からUHC鋼ができるし、しかも上流工程への投資が省略できるのはインド財政には絶大のメリットとなる。
以上の研究成果から、(1)ウ-ツ鋼の副原料である竹の種類と植生および製炭法(2)レバノン・シリヤの(近代)植生ないしは歴史的エコロジ-などが研究されなければならないことは判然としてきた。それを確かめるフィ-ルド・ワ-クの重点としては、(1)ペシャワ-ルに残る(北インドの)ウ-ツ鋼製法の実態(2)イエメンの鋼(そのル-ツと製法)(3)イランにおける製鋼技術の歴史と現情(ホラ-サン地方、ファルス地方)が浮上してくる。編成(メンバ-)を新たにして調査可能性を確かめてゆく予定である。

  • 研究成果

    (14件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (14件)

  • [文献書誌] 林 武: "大量生産方式の現在ー社会学的展望と分析ー" 科学技術財団「年次報告」日本アメリカ合同研究会議、議事録. (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 林 武: "伝統技術の近代性ーダマスカス鋼の事例ー" 「開発と技術」(当プロジェクの総括報告書). 1-25 (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 中堂 幸政: "伝統技術の情報ネットワ-ク" 「開発と技術」(当プロジェクの総括報告書). 26-45 (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 田中 哲哉: "ダマスカス鋼再考ー金属学研究の問題ー" 「開発と技術」(当プロジェクの総括報告書). 46-60 (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 斉藤 美津子: "ダマスカス鋼問題ーアラブ科学研究論ー" 「開発と技術」(当プロジェクの総括報告書). 61-75 (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] A,アブラシュ: "ダマス鋼論ー西欧科学者の錯誤ー" 「開発と技術」(当プロジェクの総括報告書)(翻訳者、斉藤美津子). 76-90 (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 大野 盛雄: "現代から見た「米の道」ートルコの事例ー" 日本オリエント学会『オリエント』. 第35巻第1号. (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 林 武ほか: "「開発と技術」" 大東文化大学「現代アジア研究所」,

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] アママド,アルハッサンほか: "イスラ-ムの技術(Islamic Technology)" オウム社, (1993)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] Takeshi Hayashi: "A profile of the current mass-production system--a sociological overview-" U. S. -Japan comparison in national formation of technology. Intern'l symposium. (by Japan Foundation of Science). 149-158 (1991)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] Takeshi Hayashi: "India-Japan dialogue on technology in national development" PPST Bulletin, Madras, India. Dec. 1-12 (1991)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] Takeshi Hayashi: "A field note on Damascus steels" Mediterranian World. 1-1. 46-54 (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] J. K. Bajaj: "The wootz reconsidered, in reference to the Japanese traditional technology." PPST bulle tin, Madrs, India.July. (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] Adnan al-Abrash: "The Japanese technology and Syrian development" al-Ba8th, Magazine. (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より

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公開日: 1993-03-16  

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