研究概要 |
タコ・ロドプシン、シナプトフィシン、シネクシン、RNAポリメラ-ゼII、ホルダイン、グルテンに存在する数残基が連続して繰り返しアミノ酸配列(縦列反復配列)の立体構造を、コンピュ-タ-・グラフィックスを利用した分子モデリング法により予測し、一連のらせん構造(ポリプロリン、βータ-ン・ヘリックス構造)を提案した。さらに、これら以外のタンパク質に存在する縦列反復配列も、ポリプロリン・βータ-ン・ヘリクッス構造で合理的にモデリングできることを明らかにした。 タコ・ロドプシンのC末端に存在する(TyrーProーProーGlnーGly)_n(n=2,4,6,8)の縦列反復配列を化学合成し、オリゴペプチドの溶液中の構造を、核磁気共鳴法(NMR)により調べた。DMSO溶液中のn=2におけるCOSYおよびNOESY、ROESY等の二次元NMR測定の結果は、ProーProーGlnーGlyで、タイプIIのβータ-ンをとることを示唆した。また、TyrーPro、ProーProのペプチド結合は両者ともシス形ではなくトランス形であることを示した。 X線溶液散乱はタンパク質の分子全体の、大きさおよび形にかんする情報を精度よく与える方法である。このX線溶液散乱法を縦列反復配列が分子全体に渡っているグルテンに適用した。酢酸溶液の小角散乱のギニエ解析は、グルテンは長さ約70nm、直径約2nmの棒状分子であることを示した。 タコ・ロドプシンのNMRおよびグルテンのX線溶液散乱の結果は、分子モデリング法により予測したポリプロリン・βータ-ン・ヘリックス構造が大枠において正しいことを示している。このポリプロリン・βータ-ン・ヘリックス構造は、合計21個のタンパク質に存在する縦列反復配列においてとることが示唆され、一つの基本的な超二次構造である様に思われる。
|