研究分担者 |
F. HERBST ビオテク研究所, 所長
W.G. FORSSMA ニーダーザクセン州立ペプチド研究所, 所長, 教授
VICTOR WRAY 国立バイオテクノロジー研究所(GBF), 主任研究員
軒原 清史 島津製作所, バイオ機器部, 課長 (60137073)
尾崎 毅 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助教授 (20045694)
桑原 厚和 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助手 (60142890)
瀬尾 芳輝 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助手 (90179317)
古家 園子 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助手 (20096952)
HERBST Franz Biotek
FORSSMANN W.G. Niedersachsisches Institute fur Peptid-Forschung
WRAY Victor Gesellschaft fur Biotechnologische Forschung
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研究概要 |
脈管作動性ペプチドおよびその誘導体を化学合成し,その構造と生物活性の関係および生理作用に関する総合的研究を進めた。 1. 血管作動性ペプチドの化学合成 Pituitary adenylate cyclase activatingpeptide (PACAP27,PACAP38)及びその誘導体(PACAP380H,PACAP(1-15),PACAP(10-20)PACAP(27-38),PACAP(27-38)NH2),PACAP related peptide (PRP),Vasoactive intestinal peptide(VIP)を迅速連続フロー法および多種目同時合成法を用いて化学合成した。 2. 血管作動性ペプチドの構造と活性相関の研究 (1)核磁気共鳴(NMR)スペクトル法を用いた構造解析 PACAP27およびPACAP38の構造を,サーキュラダイクロリズム,^1H NMRスペクトルスコピー,ディスタンスジオメトリー,スーパーコンピューターによる分子力動学的計算を用いて解析した。トリフルオロエタノールを含む水溶液中のPACAP38は,N端1-8位は自由な構造を,9-20位,21-26位および28-34位はヘリックス構造をとる。PACAP27の構造はC端のヘリックス構造を除けば,PACAP38と同じであった。 (2)血管平滑筋標本および個体における作用の研究 (a)血管作用:PACAPはVIP様の血管拡張作用を有した。PACAP38はPACAP27およびVIPに比べ作用時間が数倍長かった(イヌの大腿動脈)。PACAPフラグメントにも弱い拡張作用を認めたが,作用発現には全構造が必要であった。モルモット単離血管標本では,PACAPは血管平滑筋に直接作用した。無麻酔犬において,PACAPは小腸より胃の血流を選択的増加させ,その血管拡張作用はVIPより強く,作用時間も長かった。これらの知見は,PACAP38のN端構造が作用時間に重要であり,PACAPが血管調節因子として作用している可能性を示唆している。 (b)血管外作用:PACAPの一次構造の約70%がVIPと同じであるが,モルモット胆嚢単離平滑筋標本および無麻酔犬の胆嚢では,VIPと異なり弛緩作用ではなく収縮作用を示した。PACAP38とPACAP27は共に胆嚢収縮作用を有することから,この作用活性はN端部にあると推定された。一方,イヌ総胆管末端のオッヂの括約筋では,PACAPはVIPと同様の弛緩作用を示した。PACAPのイヌの胆嚢収縮および膵酵素分泌刺激作用は,コリン作動性神経を介するが,モルモットの胆嚢および膵腺房細胞に対しては直接作用であった。 (C)これらの構造解析および生物性の研究の結果,(1)PACAPの血管平滑筋の弛緩作用にはC端のVIP様の構造が,(2)作用時間に関してはPACAP38のC端の構造が,(3)胆嚢平滑筋の収縮作用に関しては,PACAPのN端構造の中でVIPと異なる部位が重要であることが判明した。今後,PACAP38の8位および21位の置換体,および34-38位,35-38位を欠く誘導体の構造活性相関の研究を進める。 (d)VIPとその受容体分子の進化の過程に於ける相互作用を検討するため,モルモットおよびイヌVIPの両種における血管拡張作用を検討した。一次構造の違いにも拘らず両者の関係は進化の過程で良く保たれていた。 3. PACAP特異抗体を用いた免疫学的研究 (a)PACAP抗体:PACAPおよびその誘導体を抗原として,ウサギを用いて40種の抗体を作製した。PACAP38に特異的な2抗体を得た。現在,この抗体を用いて生体内に於けるPACAPの分布を検討中である。(b)PACAPのラジオイムノアッセイ法:PACAP38には,放射性ヨードと反応するチロシン残基が4個存在するため,見かけ上高い非特異的結合が観測される。この問題を解析するため,さらに高い感度の測定法を開発中である。 4. 日独の共同研究分担者およびその協力者による「脈管作動性ペプチドの生合成と生理作用」に関する国際ワークショップを京都で開催し,これまで3年間の研究成果を発表した。この会議で,受容体によるペプチドの分子認識機構と生理作用に関する共同研究を進めることになった。
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