研究概要 |
本年度は英国(北イングランド及びウエ-ルズ)と日本の各地に分布する蘇苔類について、重金属を高濃度に蓄積する種類の採取を行い、合せて含まれる重金属の量とその化学形態に関する検討を行った。 英国北イングランドではまず、鉛鉱山として知られていたGreenside mineを調査し、溪流に分布する三種の鉛蓄積蘇苔類(Gymnostomum aeroginosum,Philonotis fontana var.caesritosa,Timmiaーaustriana)を発見した。これらの蘇苔類に含まれる鉛の量はいずれも1〜2%に達し、分布水域の水中の鉛の濃度が数ppmであるのに比較して極めて高濃度であった。一方、光電子分光分析法を用いてGreenside mineを構成する鉱石中の鉛の化学形態を調べた所、それは硫化鉛(PbS)およびその酸化物と考えられる硫酸鉛(PbSo_4)であった。だが、水中の蘇苔類に蓄積した鉛の化学形態は硫化鉛でも硫酸鉛でもなく、有機能の鉛として存在する可能性が高いことが明らかとなった。 英国ウェ-ルズでは、銅鉱山として知られていたParice mountainを調査し、廃鉱からしみ出した強酸性の水の中に苔類のCephalozia bicuspidataが分布するのを確認した。この苔類に含まれる銅および亜鉛の量は数百ppmであったが、銅は生物にとって極めて有毒で、1ppmを越す銅を含む水の中ではほとんどの生物は生存出来ないことを考えると、C.bicuspidataが約5ppmの銅を含む水の中で銅を濃縮しながら生存していることは興味深い。 日本の試料としては、湧水中に広く分布する蘇類のアオハイゴケ(Rhynchostegium riparioides)について含まれる微量元素の組成を明らかにする一方、銅ゴケとして知られるホンモンジゴケ(Scopelophila cataractae)に含まれる銅について調査した。
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