本年度は英国(南イングランド及び北イングランド)と日本の各地に分布する蘚苔類、シダ類等について採取を行い、含まれる重金属の量とその化学形態に関する検討を行った。更に水生蘚苔類の分布する水についても同様の検討を行った。 南イングランドでは、まず、各地に重金属鉱山の分布するCornwall地方の廃鉱、鉱山廃水、コケ植物について調査を行った(このうち、Cornish siteでは、1992に入って鉱山廃水及び鉱さいをためていたダムが溢れ出し、付近が大規模な汚染を起こいた。このため大規模汚染を起す前の河川の水質調査を行った我々のデ-タが汚染の程度を評価する上で役立ったこととなった)。このほか、自然環境保全地域の分布するDortmoor地方についても樹上の着生蘚苔類ならびに水中の水生蘚苔類の採取を行い、重金属汚染地帯のコケ植物との比較のための試料(バックグラウンド試料)とした。北イングランドではDurham西部に分布する石灰鉱山(現在は廃鉱となっている)に注目し、酸性鉱山廃水の中で生長している水生蘚苔類と水を採取し分析を行った。又バリウム鉱山(廃鉱)についても同様の調査分析を行った。 日本国内では各地(屋久島、作賀関、北九州、下北半島)の調査を行い、着生蘚苔類、水生蘚苔類、シダ植物、杉(樹皮及び葉)の採取を行い分析試料とした。特に佐賀関と北九州については、銅ゴケとして知られているScopelophila cataroctae及び重金属蓄積シダとして知られているAthyrium yokoscenseに注目し、採取と分析を行い、蘚苔類とシダ植物の比較検討を行った。下北半島では水銀で汚染された酸性河川に注目し、水中に分布する水銀が元素状水銀として存在することを明らかにする一方、蘚苔類に蓄積している水銀の化学形態との関係を検討した。
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