研究課題/領域番号 |
02044170
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
柴崎 浩 京都大学, 医学部, 教授 (30037444)
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研究分担者 |
HALLETT Mark 国立衛生研究所, (NHI)NINDS(アメリカ合衆国), 部長
LUDERS Hans クリーブランドクリニック, 神経内科(アメリカ合衆国), 部長
米倉 義晴 京都大学, 医学部, 助教授 (60135572)
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研究期間 (年度) |
1990 – 1991
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キーワード | 随意運動 / 高次脳機能 / 運動関連脳電位 / 硬膜下電極 / 運動関連脳磁図 / 局所脳血流 / PET |
研究概要 |
ヒトの随意運動に関する高次脳機能の機序を明らかにするために、平成2年度から2年間にわたり、アメリカ合衆国を初めとする諸外国および国内の研究者と共同研究を行い、次のような成果を得た。 1.硬膜下電極記録による運動関連脳電位の発生機序の解明 初年度は当研究代表者が、本研究補助金によってアメリカ合衆国のクリ-ブランドクリニックに短期間滞在し、同施設に留学中の共同研究者池田昭夫氏と共に、H.リュ-ダ-ス博士と共同研究を施行し、さらに2年度にはH.リュ-ダ-ス博士を同じく本研究補助金によって京都大学医学部に招へい外国人学者として招待し、本共同研究に関する打ち合せを実施した。その研究内容は、これまで不明であったヒトの随意運動に先行する頭皮上電位の発生源を、術前のてんかん患者数名を対象として、硬膜下記録により明らかにした。すなわち一側手指の単純な随意運動の約2秒前から一次運動野と補足運動野の当該運動に関連した部位が限局性に、しかも両側性に興奮し、運動開始の300msec前になると主として反対側の一次運動野の興奮が急速に増強することが明らかになった。すなわち、少なくとも単純な運動に関しては、補足運動野が一次運動野の上位にあって支配するということはなく、むしろ一次運動野の重要性が示唆された。 2.随意運動時の局所脳血流の測定 当京都大学医学部のポジトロン断層法(PET)を用いて、数名の正常被検者を対象とし、一側手指の随意運動反復中にH_2^<15>Oを静注し、脳血流の画像を求めた。これに関しては方法論をある程度確立したが、まだPET画像を同一被検者の核磁気共鳴画像(MRI)に重畳する手法と、その推計学的検討が未完成である。しかしながら、一応複雑な手指の運動では、従来注目されてきた補足運動野だけでなく、一次運動野が両側性に重要な働きをなすことが示唆された。これは上記(1)の電気生理学的所見と一致する事実であり、興味深い。この方面の研究は、さらに今後も継続して行う価値があるものである。なおこの研究に関して、研究分担者の米倉義晴助教授が初年度にカナダのマッギル大学脳研究所を本研究補助金によって訪問し、研究発表と討論を行った。 3.運動関連脳磁図の計測 脳磁図は脳電位に較べて空間解像力が優れていることを利用して、正常者の手指の随意運動に伴って出現する脳磁場を計測した。まず第2年度の前半に、研究分担者の長峯隆助手が別の研究費によってアメリカ合衆国のNIHに3カ月半滞在し、M.ハレット博士、佐藤進博士との共同研究により、7チャネルの磁気計測装置を用いて運動関連脳磁図を記録した。その後岡崎の国立生理学研究所との共同研究により、同研究所の37チャネル磁気計測装置を用いて数名の正常者で記録を行い、現在そのデ-タを解析中である。なお、この方面の研究に関する共同研究打ち合せおよび討論のため、当研究代表者は第2年度に本研究補助金によりオ-ストリアのウィ-ン大学、ドイツのミュンヘン大学、ヂュッセルドルフ大学、ミュンスタ-大学の関連施設を訪問し、今後も共同研究を進める予定である。 4.NMRスペクトロスコピ-による生体脳の化学的研究 本方法はヒトの脳の化学的変化をin vivoで検索できる唯一の手段であり、国立精神・神経センタ-との共同研究により、ヒト脳の安静時の ^<31>Pおよび ^1Hのスペクトルを得ることに成功しているが、随意運動中の脳局所の化学的変化の解析は今後に残された課題である。
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