研究概要 |
臨床検査データベースの構築には医療情報の中での位置づけを考慮して,多面的に利用出来るように構築するとともに,他施設との互換性を配慮する必要がある。臨床検査データベースが標準化していると他施設にデータを迅速,正確に送信でき,患者の転医,救命・救急,旅行先での不時の診療に対応でき,メリットは極めて大きい。しかし,日本における臨床検査データベースの現状は各施設が独自に構築しているため,データの互換性がなく,上記に条件を満足していないので,実地診療で多大の支障を来している。この日本における現状を共同で調査研究し,その問題点を分析することにより,臨床検査データベースの統一的な標準案のあり方を探った。 一方,中国においては臨床検査システムにコンピュータ導入が今後急速に行なわれると考えられるので,日本の撤を踏まないためにも現段階で,中国の代表的大学病院の臨床検査部門における臨床検査データべースを共同調査するとともに,データベースの標準化の必要性を啓蒙教育し,中国における全国統一的な標準化を図ることが,中国の近代医療の向上に貢献しうると考えられる。 以上の観点から,本共同研究を開始し,所期の成果を挙げることができた。 研究経過 [派遣による実績] 平成2年度は日本側研究者3名が中国に赴に,先ず北京医科大学ついで,日本側研究者に中国側研究者が同行して,北京市内の協和医科大学,中国友好病院において,また上海では上海第一医科大学と長征病院において,平成3年度は日本側研究者1名が中国側研究者2名とともに西安医科大学,および南京医学院において,平成4年度は日本側研究者1名と,中国側研究者2名が中山医科大学第一病院,中山医科大学第二病院,広州医科大学において,臨床検査システムを調査した。未だ中国では臨床検査がシステム化されていないので,職員に対してシステム化およびデータベース統一,すなわち標準化の重要性を講演して,本共同研究の意義を周知させた。 この教育活動によりデータベース標準化の重要性が彼らに理解され,我々の所期の目的は達せられたと考える。 [招聘による実績] 平成2年度は中国側研究者2名を招聘し,日本における臨床検査データベースの現状を共同調査した。東京医科歯科大学,東京大学,三菱油化検査センターを調査対象とした。平成3年度は中国側研究者3名が来日し,東京医科歯科大学,自治医科大学,SRL検査センターを,平成4年度は中国側研究者1名が来日し,東京医科歯科大学,神戸大学,京都大学を調査した。 日本においては臨床検査がシステム化されており,コンピュータが導入され各病院に臨床検査データベースはあるが,病院間における互換性がなく,データベースの相互利用に支障を来たしているなど,その問題点を把握することが出来,一層,データベース標準化の重要性を認識できたと中国側研究が評価していた。 今後の展望 以上,3年間の共同研究を通して,中国人医師,検査技師にデータベース標準化の重要性が理解された考えられる。中国では病院へのコンピュータ導入が今後急速に行なわれると考えられるので,中国におけるこの分野の発展に寄与すると確信している。また,わが国を含め,先進諸国で不可能な医療データベース統一が実現すれば患者の受ける恩恵は計り知れないと考えられる。 北京医科大学では本共同研究が極めて重要な意義を持つものと捉え,今後の継続研究を要望して研究代表者の椎名晋一を平成4年から北京医科大学客員教授に任命して教育,研究の支援を要請している。従って,本研究は今後も継続し,発展することが期待される。
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