研究課題/領域番号 |
02045021
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
井上 通敏 大阪大学, 医学部附属病院, 教授 (30028401)
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研究分担者 |
MARBAN Edupr ジョンズ, ホプキンス大学・医学部, 准教授
WEISFELDT.MY マイロン ジョンズ, ホプキンス大学・医学部, 教授
武田 裕 大阪大学, 医学部附属病院, 助教授 (20127252)
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キーワード | 心筋 / 摘出潅流心 / 虚血 / 再潅流障害 / 細胞内カルシウム / フッ素核磁気共鳴法 / カルシウム・チャネル |
研究概要 |
平成2年度においては、虚血・再潅流に伴い生じる、心筋細胞内のカルシウム・オ-バ-ロ-ドの発生機序について、フッ素核気共鳴法(FーNMR)を用いた検討を行なった。摘出潅流心にCa指示薬5FーBAPTAを負荷し、その信号をFーNMRにて観測することにより、細胞内カルシウム濃度が測定できる。フェレット潅流心標本を、30℃、30分間の虚血状態に置き、その後再潅流すると、細胞内カルシウム濃度は、虚血前316nMから虚血25ー30分において1213nMまで上昇し、再潅流直後0ー5分でも944nmと上昇していたが、その後、速やかに対照時の値へと回復した。 この虚血・再潅流に伴った細胞内カルシウムのオ-バ-ロ-ドは、主として、ナトリウム、カルシウム交換機構によりもたらされるとこれまで考えられてきた。しかし、虚血時の膜脱分極に伴ったカルシウム・チャネルの開放も、カルシウム・オ-バ-ロ-ドの機序として考えられるが、これを細胞内カルシウム濃度の直接的測定により検討したものはない。そこで、心筋をカルシウム・チャネル遮断薬にて前処置の後、虚血・再潅流を行った。すると、虚血前のカルシウム濃度は非処置群と有意差はなかったが、虚血25ー30分にても474nMに低く、再潅流後の一過性増大も認めなかった。すなわち、虚血・再潅流時に認められるカルシウム・オ-バ-ロ-ドは、カルシウム・チャネル遮断薬により阻害された。このことは、虚血・再潅流時の細胞内のカルシウムの制御機序に、カルシウム・チャンネルも関与していることを示唆し、新たな知見と考えられる。なお、本研究は、研究分担者に加え、楠岡英雄(大阪大学助手休職中、ジョンズ・ホプキンス大学助教授)の協力を得て行なわれた。
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